記憶225 ページ36
「えっ……」
あんな期待させるようなこと言っておいて、キスしたら不運だ、なんてあんまりだ。怒りと悲しさで再び涙が出そうになる。
「ちが、違くて! せっかく思い出せたのに、会えたのに、Aちゃん彼氏いるみたいだから……」
まっすぐに私を見つめて伊作さんは言った。
「そういう事するのは、嫌じゃ、ないです」
恥ずかしい事を聞いてしまったと今更自覚して、まともに顔が見れなくなる。でも視界いっぱいに伊作さんの顔が広がるくらいの距離に彼がいるのだ。
「彼氏ならいません。でも、とりあえず退いてくれると助かります」
顔を横に向けそう言うと、伊作さんはようやく上から退いた。
目に見える汚れは無かったけれど床は床は。綺麗ではないだろうと後頭部や背中を軽く叩く。
「……私の今の気持ちでしたね」
正確には一年前の出来事になるのだが、記憶が蘇ったのはついさっき。つまり、ついさっきまで好きだった人が今も好きかどうかを聞かれているようなものだ。
(そんなの決まってる……)
「もちろん、好きです。一年前のあの時から」
「うん、僕も好きです。……五百年前から」
傍から見ればおかしなことを言っているようにしか見えないだろう。いや、私たちも同じだ。私たちもおかしくて二人で笑った。
でも、私たちにだけ分かる特別な言葉。
「お客様、花、自分用に買うって言ってましたよね。……僕が贈ったら受け取ってくれますか?」
わざとらしい態度にこちらも仕返しのつもりで同じようなことをする。
「……それなら店員さん、赤い薔薇を贈ったら受け取ってくれますか?」
夢のような経験をしました。誰に言ってもきっと信じて貰えないような、私自身も信じきれないようなそんな経験を。
でも、夢ではなかった。
彼との再会が、私にそれを教えてくれました。これから私が過ごす時間は、彼と過ごす時間が多くなるんだと思います。それを思うと、今から胸がドキドキとワクワクで弾けてしまいそうです。
(やっぱり今日はとびきりのお出かけ日和だった)
私たちは声を揃えて言った。
「是非、受け取らせてください!」
「是非、受け取らせてください!」
fin
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時