記憶192 ページ3
立花さんと別れてから少し走り回った。
すれ違った五年生に心配されたが、大丈夫と雑に返答をして山本さんの居場所を訊いた。
しかし、誰も山本さんは見ていないらしい。
くノ一長屋も今さっき覗きに行ったが、三人組のかわいらしい女の子たちが忍たま長屋に向かったと教えてくれた。
忍たま長屋に行ったのなら医務室、もしくは私の部屋に来てくれているかもしれない。
あとは先生方に話でもあって、そっちにお邪魔しているか。
考えたところでわからない。
それなら動いた方が早いので、無駄足は食うだろうが虱潰しに回るしかなかった。
初手で医務室に向かったが山本さんはいなかった。
新野さんに話を聞くとどうやら山本さんが先程来て、いないとわかると私の部屋に行ったと。
有力情報を掴んで私は現在自室に向かっているところだ。
自室前の壁に山本さんが背中を預けていた。
体の半分が足というスタイルの良さが、壁にもたれていることでより際立っている。
雑誌の撮影と言われても疑わないほどの目の引きようだ。
近付くうち床板が軋み、音に反応してこちらを見た山本さんと目が合った。
「Aちゃん……」
恐る恐るという風に名前を呼ぶ山本さんがおかしくて、少しだけ笑ってしまう。
「はい、なんですか? 山本さん」
この距離感では会話がしにくいと歩みを進める。
白昼夢を見ているかのように見開かれた目には、次第に大きくなる私の姿しか映っていなかった。
「とりあえず中へどうぞ」
右手で戸を引いて左手で中に入るよう促す。
「ええ、ありがとう」
横切る山本さんの鼻は頭がほんのり赤くなっていて、目も微かに潤んでいた。
やはり少しおかしい。
出会って数週間。
最初の頃は嫌悪の対象ですらあったであろう私に対して、こうまでなってしまうものだろうか。
それも、一端の大人が。
もちろん、感情に大人も子どももないことは理解している。
だが少なくとも私なら、多少は安堵などするだろうが、涙ぐんだり泣いたりなどしない。
彼女が入ってから自分も部屋に入り戸を閉めると、五年生の話を始めた。
「五年生の子たちが、Aちゃんが私を探してたって教えてくれて。下手に動き回るよりここで待ってた方が早く会えるかと思ったのだけど」
と悪戯っぽく笑って「正解だったかしら?」と続ける山本さんに思わず見とれてしまったが、慌てて肯定の返事をした。
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しおむすび(プロフ) - 夜分遅くにすみません。少し昔に拝見したこの作品、またRKRNに加熱したので少し覗いて見たら、これがもうどハマりしてしまって…登場キャラの細かな心理描写、細部の設定などに心打たれました。これ以上のRKRN夢は存在しません!これからも頑張ってください! (3月23日 0時) (レス) @page50 id: 85b974bf49 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - あみさん» あみ様、コメントありがとうございます!何年経っても色褪せない作品、それがnntm(RKRN)ですから…!もったいないお言葉、恐縮でございます。これからも良き夢ライフをお過ごしくださいませ! (2月3日 8時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
あみ(プロフ) - 16で忍たまに加熱、22歳で再加熱した者です。処女作とは思えないくらいストーリーや伏線がきっちりしてて、とても素晴らしい作品でした!😭ひとまずは今回の長編執筆お疲れ様でした! (1月22日 16時) (レス) id: 4a1c0578e6 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - riemoa0323さん» riemoa0323様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - たけのこさん» たけのこ様、コメントありがとうございます!お返事が遅くなりすみませんでした。そう言っていただけてなによりです。こちらこそ、閲覧いただきありがとうございました! (11月26日 22時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小学7年生 | 作成日時:2020年3月5日 14時