２２４話 ページ29
シャワーを終えて髪も乾かさないままAは浴室を後にした。
もっとも、乾かそうにもドライヤーなんてものはここ、復讐者の牢獄にはない。
「使うのならどうぞ」
室内であることもかまわずに黒いコートとハットを被った人物が、浴室を出たすぐのところに立っていた。
一応と声をかけたが、彼らにも衛生観があったのだろうか。
「おまえは」
ノイズがかかったような声が呼びかけた二人称はAに向けられていた。
すでに復讐者の横を通りすぎて、お互い背中合わせになっている状態だったがAは振り返りもせず、復讐者もそのまま続けた。
「おまえは、我々の目的のために必要な存在だ。どんなに不完全な力であろうと、停止を扱えるのはおまえだけだからだ」
何を返すわけでもなく、ただじっと聞く。
「だから」
ぞわりと鳥肌が立つ。
首に巻きついた冷たさに反応したのだと気付いた時には、すでに弱く力が加えられていた。
「おまえが何をしようと、大抵のことに目をつぶろう。それがバミューダの方針だ」
首に触れる指は死人のような冷たさだ。
皮膚の下で冷やされた血液が流れていくのを感じる。
「だが、我々の邪魔だてをするのであれば容赦はしない」
首を絞める力が強くなり、吐き出された二酸化炭素さえ惜しく思える。
「おまえを救ったバミューダに恩を仇で返すような真似はしないと、誓われたところで信じはしないが。……これだけは胸に留めておけ。死にたくなければ、余計なことはするな」
言い終えたのか、締めていた指が離れた。
特段焦る様子も急ぐ様子もなく、いつも通りに呼吸を再開したAは聞かされた一連の話をもって、この復讐者が沢田家光に深手を負わせた者だと判断した。
家光のことを助けたのはバレていたらしい。
すっかり冷えた首に手をあてると、回らなくなっていた分の血液を送るために激しく打つ脈がみつかった。
落とした視線の先にはAのことを覆うように復讐者の影が重なっている。
「助けてくれと、頼んだ覚えはありません」
包帯の上からでもわかる。
復讐者は眉間に皺を寄せた。
「元の……小村Aであった私は生を願ったのかもしれませんが、わたしまでそうだと思わないでください」
軽く拭いた程度の髪から水滴がひとつ落ちる。
「ですが、それがあなた方に敵対する理由になるとも考えません。発言通り、忠告は胸に留めておきます」
ゆっくりと動き出したAを復讐者は引き止めない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 676人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「家庭教師ヒットマンREBORN!」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小学７年生(プロフ) - 藍茶さん» 藍茶様、コメントありがとうございます。並びに返信が遅れて申し訳ございません。一気読み！？！？！？！？こんな長い話をですか！？！？ありがとうございます！気ままに更新してアフターストーリーまでいけるよう頑張りますのでぜひお付き合いください！ (4月23日 23時) (
レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
藍茶(プロフ) - コメ失礼します。めちゃくちゃおもしろくて一気読みしてしまいました……！お忙しいとは思いますが、更新を気長に待ってます🥺✨ (2023年4月15日 23時) (レス) id: 6dc077f6ee (このIDを非表示/違反報告)
小学７年生(プロフ) - ステッカーさん» ステッカー様、コメントありがとうございます。は、ははははは初めて読んだってことはつまり雪のあれやこれやがぐっちゃぐちゃの今の状態を読まれたわけですよね……。非常に申し訳ないです。それでもコメントしてくださって……励みになります！ありがとうございます！ (2022年11月14日 0時) (レス) id: 01b7521881 (このIDを非表示/違反報告)
ステッカー(プロフ) - 初めましてコメント失礼します。初めて読ませていただきました 物語が進むにつれてどうなるのか、と更新されるのを楽しみに待っていました。更新頑張ってください！応援しています (2022年11月13日 12時) (レス) @page29 id: b18adaf805 (このIDを非表示/違反報告)
小学7年生(プロフ) - ひいろさん» ひいろ様、コメントありがとうございます！そう言っていただけて光栄です。最近ではTwitterの方でも創作が増えてきて私もとっても嬉しいです！拙い文で更新も遅く申し訳ないです……。それでも微力ながら、リボーンの二次創作を潤せるように頑張ります！ (2021年9月7日 18時) (レス) id: 4d32c86c6a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小学7年生 | 作成日時：2021年1月10日 16時
