キャニング・ウルフ -S.Hirano-

8 ページ8

「恩に着るよ、純朴少女」


東京駅で改札機を通ったとき切符が回収されて大騒ぎしたり、間違えて反対方向の電車に乗りかけたりしながらも、なんとか平野さんはバターサンドを買うことができた。


「いえいえ。ちょっと驚きはしましたけど…電車乗ったことなかったりとかは」

「普段は車移動だからな」

「でも、うちのマンションって駐車場ないですよね？」

「ああ、だから車は本拠の方に置いてある」

「…ホンキョ？」

「そうそう、あそこは仕事用の部屋だから」

「お仕事何されてるんですか？」

「あ〜、あんま人に言わないようにしてんだわ。バレると大変だから」

「はぁ…」


人にバレると大変な仕事って何よ…やっぱりヤクザ？と思いながら歩いていると、スマホが鳴る音がした。私のじゃないから、平野さんのだ。


「もしもし…ジンか？いや…まだ15時間あんだろ、余裕だよ。…いや、今はまだその半分くらい？ でも大丈夫だ。俺は絶対落とさねー！ここで死ぬほど俺はザコじゃねぇよ」


何の話だろう、「死ぬ」って言ってるけど…半分とか、落とすって何？やっぱり、この人とは関わっちゃいけない気がする…

9→←7

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す