キャニング・ウルフ -S.Hirano-

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リビングに案内されたると、見渡す限り本棚、本棚、本棚。




どこかの図書館かと思うほどの本棚にはちょっと過剰なぐらいの地震対策と、角にぶつかって怪我をすることを防ぐための安全対策が施されていた。この人の危機管理に関する優先順位はちょっとよく分からない。




そして、映画館ですか？というほど大きな液晶テレビの隣には立派なスピーカーも備えられている。あとは大きくて白い革製のソファと木目調のローテーブル。その上には火の灯ったキャンドルがひとつだけ。インテリアとして観葉植物も置いてあるけれど、暗すぎてあまりその役割を果たせていない気がする。そして、謎のベビーベッド。これには触れないほうが良い気がする…




「お茶飲むか？…淹れ方とか分かんねぇけど」


「私、淹れますよ。あと、良かったら材料買ってきて何か作りましょうか？」


「いや、バターサンド食い過ぎて胃もたれしてきた…」


「そうですか、じゃあお茶だけ淹れるんでキッチンお借りしますね」




キッチンは私の部屋の1.5倍はありそうな広さで、家政夫さん用なのか料理器具が揃っている。ブランド物らしいティーカップやプレートに並んで、一際存在感を放つ子供用ご飯茶碗が目についた。これも、スルーしたほうが良さそうだ…




シンクには直に茶葉と水を入れたコップがそのまま放置されていて、一応お茶を淹れてみようとした彼の努力が伝わってくる。



レディ・グレイの紅茶を淹れて、お盆に載せて運んで行くとそれだけで目を輝かせる。きっとそろそろ水道水に飽きていたのだろう。

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