14 ページ14
.
紫「次、Aちゃんの番ね」
そう言って、 “ はい ” っと笑顔で
差し出されたドライヤーを
恐る恐る受け取り、
座っていた場所を交代する。
ドライヤーの電源をつけ、
茶色い細く繊細なサラサラな
髪の毛に触れると
その一本一本が靡くように揺れた。
ドライヤーの風に乗って
運ばれてくるシャンプーの香りに
私はどんどん冷静さを失う。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚。
その全てで平野先輩を
全身で感じると
微かに指先が震えるのを感じた。
そして、まるで小さなワンコを
撫でるように髪の毛に
指を絡ませていると、
コテン、と頭が私の膝に預けられる。
そこそこ髪の毛が乾いていたので
驚きながらも電源を切って
それをすぐ傍に置くと
瞼が静かに閉ざされた。
「…先輩？」
紫「…ごめんこんな時間まで。
親御さん心配するよね、今度こそ家まで送るから」
スっと立ち上がった先輩の腕を掴む。
無意識だった。
何も考えていなかった。
「親、仕事でほとんど家にいないんで大丈夫です。
私こそ、こんな時間に押しかけてごめんなさい」
紫「…そっか。俺の母親も仕事で帰りは遅いし弟は外出歩いて遊んでるし。だから当分誰も帰ってこないからそんなに気にしなくていいよ」
ソファに座ったまま、
立ち上がった先輩の腕を掴み見上げる私。
急に恥ずかしくなってパッと手を離すと
今度はその手が私の頬を包む。
一気に強く香った香水の匂い。
顔を傾けた先輩が
徐々に近づいてくるのが
ハッキリと見えた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1131人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みう(プロフ) - こころさん» コメントありがとうございます^^今までの作品も読んでくださりとても嬉しいです、そして温かいお言葉の数々も嬉しい限りです(；；)これからも是非お付き合い頂けると幸いです。今作もご愛読ありがとうございました！ (2020年10月23日 23時) (
レス) id: 3c79c161a1 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 完結おめでとうございます！みうさんの作品読んでます、いつも切ない感じで恋愛ってそんなに上手くはいかないもの、人の気持ちってそんなに簡単にいかないものって現実を見せられてる気がします。いつも素敵なお話ありがとうございます！また新作も楽しみにしてます！ (2020年10月23日 22時) (レス) id: f2c5e943bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みう
| 作成日時：2020年9月16日 17時
