Story 10 ページ12
夜中の2時過ぎ頃。
あたしはふと思い立ってベランダに出た。
冬だから空気が澄んでる。星も月も綺麗に見える。そんな月を眺めていると、不意に視界が滲んだ。
「……え？」
泣いていた。
何でかは分からないけれど、あたしの目からは涙が溢れていた。
「何で……涙なんて」
と、あたしの頭がキィンッと痛む。前世を思い出した時よりも痛い。
あたしの頭の中に浮かぶのは、見覚えのない2人の男女。
『ごめんねA……。今はこれしか方法がないの……』
『お前を組織から切り離すには、こうするしか……。すまない……』
『ごめんなさい……。ごめんなさい、A……』
涙ながらにあたしにそう訴える男女。あたしには見覚えがない。
そして、その2人の後ろに月のような何かが輝いていた。
「……」
何だか無性に悲しくなった。
思い出したくない。
あたしの頭は警鐘を鳴らしていた。
思い出しちゃダメ。思い出したくない。
あたしの心が壊れる前に──
「A？」
不意に後ろから声がした。あたしはびくりと肩を震わせ、目をごしごしっと擦った。
それから何でもないように振り向く。
「あ、零兄」
だが、零兄の顔は険しい。何か変だったのか、と思ったのも束の間、零兄はあたしに1つ問いかけて来た。
「……泣いた、のか？」
何で分かるの。
分かんないようにしてたのに。
「……何でそう思ったの？」
「目が腫れてる。それに、いつもならそんな悲しそうに笑わないだろう？」
あたしはどきりとした。いつも通りの笑顔のつもりだったのに。
「……ちょっと感傷に浸ってただけ。問題ないよ」
あたしは目を伏せながらそう言った。
零兄は軽くため息をついてから、
「ホットミルク持って来たけど……飲むか？」
とあたしに尋ねてきた。
あたしは「飲む」と即答。零兄はそんなあたしに苦笑していた。
「……その様子じゃ、何かあったんだろうけど。今は何も訊かないことにした」
「……訊かないの？」
「言いたくないことを無理に言わせようとするほど俺も鬼じゃないよ」
「……ありがとう」
あたしはホットミルクをすすりながら言った。ほっと体が温まる。
ホットミルクってこんなに美味しかったっけ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 930人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おーにし(プロフ) - 零大好き(*´ー｀*)さん» ありがとうございます！降谷さんをカッコよく書けるよう精進してまいります(^^) (2018年4月21日 19時) (
レス) id: 1c4bcc000c (このIDを非表示/違反報告)
零大好き(*´ー｀*) - めっちゃ面白いです。降谷零が好きなのでいいですね！ (2018年4月20日 21時) (レス) id: 99bad809e9 (このIDを非表示/違反報告)
零音(プロフ) - おーにしさん» いえいえ、こちらこそすいません。m(_ _)m (2017年10月5日 8時) (レス) id: 0fac29e216 (このIDを非表示/違反報告)
おーにし(プロフ) - 零音さん» そうなんですよ。ご心配おかけしてすいませんでした (2017年10月5日 6時) (レス) id: 0c53be3934 (このIDを非表示/違反報告)
零音(プロフ) - おーにしさん» はい、そうです。結構似ていたので、偶然似てしまっていたんですね。 (2017年10月5日 1時) (レス) id: 0fac29e216 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おーにし x他1人 | 作成日時：2017年5月14日 0時
