トロイメライの贈り物 (ページ8)

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退廃的なこの場所はページ8

目を開けるとあたりは暗くなっていて
路地裏にいたはずの男はギシギシと悲鳴をあげるパイプベットに横たわっていた

月の光があまり入らない部屋なのか
目を凝らすとベットと対称的に置いてある椅子に誰かが座っているのが分かった

あの女だ

金髪の結っていた三つ編みは解けていて
膝を抱えて俯きがちに座っている

「ここはどこだ」

そう聞けば女は小さな声で言った

「79番外の端っこ…」

そんな遠くまで連れてこられたのかと少し呆れて
ベポのことを聞く
なんでもベポは暗示をかけて船に戻らせたそうだ
この調子だと恐らく自分にも何かしらの暗示をしてここまで連れてきたのだと察した

「残念だったな、お前の能力は効かないようだ」

現にローはあの男の様に動悸も発汗もしていない
じっと女を見つめてそれを告げると
女は肩を震わせていた

「他人の夢で…あんなに悲しい夢初めて見た…」

どうして平気でいられるの？と女は続けて言った

「最後に見ただろ、俺はあの人の本懐を遂げるまで
死ねないんだ」

『それが叶ったら、どうするの？』

「さぁな、だがまぁ、医者として知りたい事が山程あるし、仲間達と旅を続けて…それから…」

それから？と女は言う。
男は小さな溜息を吐き少し俯く

帰ってこない答えに女もまた俯き黙り込む

静かな沈黙は男の体をほぐした時の鈍い関節の音でやぶられた

「…おい、俺はもう行くからな」

男の言葉に女は少し焦った顔をしてあわあわと喋りだした