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「ほんと、俺達もまだまだお嬢に甘いわ」
どこか呆れたような、安堵したような。
柔らかい溜め息と共にそう言葉を溢す須貝。
「そもそも、Aが風邪引いただけで全員集まんのが可笑しい」
須貝に続き、自分もその内の一人であるにも関わらず、呆れる川上。
散々お嬢様に髪を弄られて文句を言わない彼も、相当彼女に甘い。
「だから早く治るように薬作ってやったのに」
お嬢様の部屋で優雅に本を読んでいる彼は、そう言ってわざとらしく息を吐く。
河村は恐らくどんな部屋を割り振られても自分のものにしてしまうのだろう。
「てかみんなして色々あげすぎ。これ以上甘やかしてどうすんの」
己が一番甘やかしているのだが、自分を真っ先に棚へあげる福良。
忘れたとは言わせない。
三時間分の労力がかかったプリン。
「待って、フルーツバスケットまであんの?マジで太るよ、A」
サイドテーブルに置かれたフルーツバスケットを見て顔を歪める渡辺。
少々デリカシーの無い発言はご愛敬。
「お嬢様がちゃーんと僕を待ってくれたら良かったんだよ?」
腕を組んでお嬢様を見下ろす子犬系ママ、こと山本。
ほぼ丸一日たっぷりと甘やかされたお嬢様はすっかり元の調子で、「 知らないわ。貴方が遅れなければ良かった話よ 」といつもの生意気っぷりを発揮していた。
それでこそうちのお嬢様か…………なんて考えてる山本は、相当お嬢様の毒に侵されているのだろう。
「お前らほんっとAのこと好きよな」
まるで一人だけ例外みたいな顔をしてそんなことを言うのは、今日一日最も長い時間お嬢様に付き添っていた伊沢。
彼の言葉を聞いた瞬間、その場に居た全員は同じことを思う。
いや、あんたには負けるよ。
「ふふっ……うちの執事は全く、バカばかりね」
賑やかなお嬢様専用の一室。
いつもはだだっ広く、ただただ寂しいだけの空間が、今だけはなによりも愛おしい。
そんな気持ちを噛み締めるようにポツリと呟いたお嬢様は、ずっと一緒にやって来た彼らを眺め、ふふっと穏やかな笑みを浮かべ続けていた。
―――この屋敷のお嬢様は、生意気だと憎まれ口を叩かれながらも、結局はこうしてみんなに愛されている、素直じゃないお嬢様なのであった。
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白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます!この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです! (2021年3月30日 17時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして(といっても覚えてないと思いますが…)今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか?紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか? (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです!お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます!普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます!ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います! (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)
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