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【風邪ですか、お嬢様】 ページ23











 正直に言うと、この屋敷のお嬢様は結構馬鹿である。

 学力的な面では馬鹿などとは到底言えない成績を叩き出しているが、普段の生活の中では満場一致で【 馬鹿 】と言われるほどには、彼女は馬鹿丸出しだ。



 例えば、お風呂上がり。

 彼女はタオル一枚でも構わず屋敷内を歩き回るし

 コーラをコーヒーと間違えて全力で振るし(その後の展開は想像に容易いだろう)

 ゲーム機に至っては遊んでいるだけで破壊したこともある。



 そんな少々おバカなお嬢様。

 実は先日、これまたお得意のおバカを発揮したようで。



 なにを仕出かしたかというと、まぁ簡単に言えば、土砂降りにも関わらず、迎えが数分遅かっただけで走って帰ってきたのだ。



 お陰でお嬢様の服や髪はびしょ濡れ。

 以前海で制服を濡らしたときも乾に散々福良と叱られた筈なのだが、それでも懲りないのがうちのお嬢様。


 今回も案の定乾にこっぴどく叱られ、(表向きは)猛反省し、数時間後にはなんとかお許しを貰えた。



 (表向きは)猛反省するくらいならば最初からしなければ良いものを。





「ごほっ、ごっほっ……」





 そしてその翌日。



 土砂降りの雨の中走って帰ってくれば、そりゃあ体は冷える。

 これでもかというほど体を冷やしたお嬢様は、翌日案の定風邪を引き、現在は体のダルさによって布団に拘束されていた。



 これにより、世で提唱されている『 馬鹿は風邪を引かない 』という説は間違いということが判明したのであった。

 おひたしおひたし。





「たく、迎え待たねぇからそんなことになんだよ」





 お嬢様の額に乗せられたタオルを変えながら文句を言うこの男は、伊沢拓司。

 大抵お嬢様を起こしに来るのは彼なので、今回もそのまま風邪引きお嬢様の第一発見者となったのである。





「ごめ、なさ……ごほっ、けほっ……」

「あーあー、無理すんなって」





 風邪で弱りきったお嬢様は、いつもより圧倒的に素直。

 その素直さに、普段は一切感じない罪悪感というものを初めてお嬢様に抱いた伊沢は、そっとお嬢様の頭を撫でて微笑んだ。





 なんだかんだ彼らの関係は十年以上にも及ぶ。


 お互いにお互いのことはよく知っているし、今ではもう一心同体のようなものだ。


 例えるなら、家族以上家族未満。

 自分で言っていて不思議な関係だ、と伊沢はお嬢様の頭を撫でながら思った。







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白菜(プロフ) - あるてぃめっとさん» コメントありがとうございます!この作品のcssは自作ですね。フォントは『ほのか丸ゴシック』を使用させて頂いてます。参考にしていただければ幸いです! (2021年3月30日 17時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
あるてぃめっと - こちらの作品でははじめまして(といっても覚えてないと思いますが…)今回も素敵な文章をありがとうございます。それともう1つ素敵なcssだなと思い…自作でしょうか?紹介がないので…もしよろしければ、使っているフォントを教えていただけないでしょうか? (2021年3月30日 16時) (レス) id: 037db07d8a (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - Rukaさん» 私も書きながら「この関係性が尊いと思える感じにしたい」と思ってるので、そう言っていただけると嬉しいです!お嬢があんな子だからきっとこんな関係性が出来たんでしょうね。これからも彼らをほほえましい気持ちで見ていただけたら嬉しいです(笑) (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
白菜(プロフ) - SALTさん» コメントありがとうございます!普段は文章詰め詰め野郎なので、今回の話は確かに読みやすいかもしれません(笑)応援ありがとうございます!ほんとにマイペースですが、これからもちょこちょこ更新していけれたらなと思います! (2021年3月29日 22時) (レス) id: 367472b3a3 (このIDを非表示/違反報告)
Ruka(プロフ) - なんというか、お互い憎まれ口を叩きながらもお互いに好いているような関係が本当に好きです。お嬢はいつもこんなに暖かい空間にいるんだと思うと、なんだか微笑ましくなってしまいました笑 (2021年3月29日 16時) (レス) id: 323f90024b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白菜 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年11月24日 19時

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