胸キュンってなんだヨ ページ6
破壊音、破壊音、破壊音――破壊音しか聞こえない。
「かはっ、は、はぁ……」
「はあ、はあ。神楽の言ってた胸キュンって、これのことだよね!」
「違うわ!!」
神威とAはお互い血を流し、骨を折られ、息を切らしながらそんな会話をしていた。
神威は夜兎で治癒速度が速いが、Aは夜兎ではないのに神威と同じように怪我が治っていた。
神威が用意した館は、もはや何もないと言えるほど破壊されていた。
さかのぼること八時間前
『A、胸キュンって知ってるかい?』
『うわ!? な、なんですか急に』
買い出しに来ていたAは、いきなり後ろから神威に飛びつかれて驚く。
『神楽が話してたから気になって』
『胸キュンですか……まあ、恋愛事は私もあまり分かりませんが、恋しくて胸がキュッてなることだと思います』
「って言ってたよね?」
時は戻り、神威は胸にも攻撃を受けた自身のボロボロの服を見る。
「恋しくて、ってちゃんと言いましたよ!? 物理的に胸がキュッてなっちゃだめでしょう!」
「そっちの方が分かりやすいじゃん」
「いや死ぬから!」
話している最中にも神威は攻撃をやめず、Aは避けて距離を取る。しかしすぐに背後を回られてしまう。
「ぐっ!」
神威はAの足を払って地面に倒し、馬乗りになる。彼は反撃を望んでいたが、Aは何もせず、ただ上にいる神威を見つめて荒く呼吸していた。
下で息を吐くAの髪は汗でしっとり濡れており、ボロボロの服から胸元が見えている。
「……ちょっとー、まだ終わってないよー?」
神威はそんな彼女の様子に少し動揺しつつ、Aの手を頭の横に押さえつける。
「疲れたん、ですー」
「たった八時間でー?」
「八時間も戦う人がいますか! まったくもー」
Aは戦いの最中でもクスッと笑った。余裕があるのか、と神威は笑顔を見てムッとする。
「疲れたとか言って余裕あるじゃん」
「あ、ふふっ。ごめんなさい、つい……神威さんと話してるの楽しくて」
「……」
神威はジッと彼女を見つめる。
「な、なんですか?」
「胸が痛い」
「えっ。だ、大丈夫ですか!?すぐに治療を」
Aは、すぐに神威を押し返して起き上がろうとする。
「意味、わかったよ」
「え……」
「今日はこれで終わりー」
神威はサッと上から退いて勝手に帰ってしまった。
「え、あ……大丈夫だったのかな?」
状況が把握できないAはただ神威を心配していた。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2021年2月13日 22時