剣に焦がれて人を好く 一 ページ48
真選組に訓練指導員が導入されてから、Aは少しずつ様子を見ながら隊士たちの指導をしていた。
最初こそ隊士たちはAの指導をそこまで厳しいものではないと思っていたが、普段は優しい彼女も指導となれば鬼教官となる。
叱咤の横行などという単純な厳しさではなく、訓練の内容が戦争に活かせるもののそれだった。
時には一人ずつスケジュールを組み、個人訓練として見ることもあって。
そこから帰ってきた者の顔は大体、生気が吸われていた。
『土方さんの武器はやっぱり危険察知の直感力ですね』
俺は道場でAと対峙する。
隊士の数は決して少なくないなか、俺たち各々の特徴を見抜いてくる。
圧倒的な量の情報を迅速に得ている
その情報を見て、隊士の悪癖と欠点を洗い出す。
『土方さんは、その直感が強い故に騙しの入った予想外のことをされると対応が遅れてしまう。良い意味でも悪い意味でも反応してしまう癖がある。猪です猪』
『褒めてんのか貶してんのかどっちなんだよそれ』
図星を突かれて反論できないながらツッコんだ。
『んで、そんな俺にはどう指導するんだ。癖を治すには相当な時間がかかると思うが』
『いいえ、癖を治す必要はありませんよ。単純です――その癖を利用すれば良いんです』
『利用……?』
『小賢しい機転を見せられたなら、それを避けるよりも先に潰してしまえばいい』
『そんな脳筋なことで良いのかよ……』
『良いんですよ。攻撃は最大の防御。何より、機転を効かせて勝ちを想定する相手に対して、その機転ごと潰すとどうなると思います?』
にっこりと笑ってAは続ける。
『相手は動揺し、必ず隙が生まれる。そこに間髪入れずに猛追を繰り広げたら、押し勝つことができる可能性もある』
それは脳筋的で一番単純な考え方であるが、俺には一番あっているものだった。
『その押し勝つためには、相手の機転を潰すほどの力が必要です』
『だがその力ってのはどうやって手に入れるんだ』
『簡単ですよ』
問われてAは、鞘から真剣を抜いて構える。
俺に刃の矛先を向け、殺気のある目を見せた。
『!』
『私と、「殺し合い」をしましょう。手加減は一切なしです』
『お前、なに言って』
『剣の強さは日々の鍛錬によって培われる。そしてそれは、強者と剣を交えるほど強さを意識し、死線に近いほど何度も限界を越えようとする』
『つまり、死の追体験をしようってか』
俺は汗を垂らして腰の刀に手を当てた。
剣に焦がれて人を好く ニ 終→←好きな人に集る男を嫌いになるのは人の性 六 終
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刹那*桜(プロフ) - あいさん» ありがとうございます!! (2022年12月27日 20時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 初コメ失礼します!! めっちゃ面白いです!! これからも頑張ってください! (2022年12月26日 19時) (レス) id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - あたりんさん» ありがとうございます!! (2022年11月20日 0時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
あたりん(プロフ) - 更新楽しみにしてます!! (2022年11月14日 16時) (レス) id: c0f0373936 (このIDを非表示/違反報告)
刹那*桜(プロフ) - 花香さん» コメントありがとうございます!9個もあって長いですなか一気に読んでいただきありがとうございます!!わりと読みづらい所もあるかと思いますが好みと言ってもらえてとても嬉しいです!!(;ω;) (2022年11月7日 23時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年11月7日 0時