記憶喪失なんてモンは治さなくても都合よく教えればいいのさ 八 ページ26
一通り説明を終えると、今度は隊士達がAに名前や思い出を語っていく。
「A、俺はお前の兄のA戦だ」
「え、お兄さん……」
戦がAの前に来て名乗る。
彼女は自分に兄弟がいたことに驚いていた。
「つっても義理だけどな。なにか覚えてることとかあったり、思い出したりしないか?」
「……ごめんなさい」
「……いや、気にするな。仕方ないな」
申し訳なさそうにするAに、戦は頭を撫でて優しく声をかけた。
「こうなったら誰が一番早くにAさんの記憶を思い出させられるか勝負しやしょうぜ。俺ァAさんと仲良いんで、土方コノヤローやシスコン脳筋な戦さんより早い自信ありまさァ」
「んだとコラ。俺はもう呼び捨ての仲になってんだよ舐めんな」
「てめーら兄貴の俺に勝てると思ってんのか」
沖田の提案で土方と戦は煽られて青筋を立て、銀時はそんな二人に呆れる。
「おいおいそんな張り合っちゃって、ガキじゃねーんだから。そんなこと言ったらAちゃんの幼馴染枠で唯一いま同棲してる銀さんが一番乗りだわ」
「何言ってるネ、同棲してる中で同じ女の子の私の方が銀ちゃんより親密度高いアル」
「いやアンタら皆なに張り合ってんですか」
新八が呆れるなか言い合いが激化し、他の隊士たちも含めて『Aの記憶呼び覚まし大会』が始まった。
一斉に皆、散り散りになり、Aは苦笑いしながらも真選組屯所内を見て回ることにした。
彼女が廊下を歩いていると、後ろから誰かが声をかけてきた。
「……Aさん」
「!」
しかし名前を呼ばれてもAが反応せず、声をかけたメガネの男は彼女の手を引く。
Aは驚いて振り向き、相手を見て申し訳なさそうにする。
「ご、ごめんなさい」
「……その様子じゃ、まだ名前を呼ばれ慣れてないみたいですね。まあ仕方ないことでしょうけど」
彼はメガネを指で上げ直す。
「失礼、俺は伊東鴨太郎です。現在は真選組の参謀をしてますが、あなたと一緒に事務処理や雑務をしていることも多かったです」
「あ……仕事仲間、ですか」
「ええ。とは言っても、あなたの仕事効率と処理能力が高くて俺は助手程度でしたけど」
伊東は自虐的に言いジッとAを見る。
「俺たちが仕事をしてた事務部屋でも少し見に行きますか? 仕事関係のものを見れば何か思い出すかもしれません」
「あ、はいっ」
伊東の提案に乗り、二人はいつも事務処理で缶詰作業をしていた部屋に向かった。
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刹那*桜(プロフ) - noche/ノーチェさん» ありがとうございます!! そう言っていただけでめちゃくちゃ嬉しいです! これからも頑張っていきます(⸝ᵕᴗᵕ⸝⸝) (2022年9月13日 21時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
noche/ノーチェ(プロフ) - 続編おめでとうございます!ずっと前にお気に入り等々は済ましていたのですがコメントは初めてさせていただきます。いつもこの作品を見るために占ツクを開いているくらいとてもこの作品が好きです。これからも愛読させて頂きます!これからも頑張ってください! (2022年9月13日 20時) (レス) id: 958fbd2e0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年9月13日 20時