好意の自覚 白銀の心 一 ページ17
夢の中で、私は人を斬っていた。
悲鳴と怒号と血の雨に打たれる。
そこに光が差し込んで、鬼が私に手を差し伸べた。
夢の中だから救いがあるのか
生々しく見せる夢
その夢はだんだんと、現実のように感じて
心に酷く重い感情がのしかかる。
夢が薄く白んで、何かの感触が伝わってくる。
「……は、お前を……かった」
音が聞こえた。
聞き覚えのある声。
暖かく、優しげな声。
相手を見たくても、夢の中にその人はいない。
別次元に自分の意識が割れている感覚がして、先ほどまでの夢はスクリーンを前にしているかのように達観視できた。
今聞こえた声の主の方へ目を向けたかったのに、意識は固まったままで。
再び声が聞こえた。
「俺は、お前を護ると誓った。なのに何一つできちゃいねェ」
そんなことないよ、と否定したかった。
でも声も出なくて。
その聞き覚えのある声、銀ちゃんの声をただ聞いているしかなかった。
「俺は、お前が傷つくたびに心がえぐられちまう」
痛い、という思いがひしひしと伝わってくる声で。
「ずっと昔から気づいてた。だがそれが仲間意識からくるものか、腐れ縁だからかっていうのがイマイチ掴めてなかった……今になって、やっと確信を持って言える」
「俺は、お前のことが――」
その瞬間、声が聞こえなくなった。
夢に引き戻されて、私は赤に沈んでいた。
死体の声を聞いた。
自分に向けられる憎しみと、怒りと、どうしようもないやるせなさ。
酷く胸を打たれた。
夢で自分でやったことなのに、自分はやっていないと否定したくなってしまう。
目をそらしたくなってしまう。
夢の中でも、悪意を向ける死体がいた。
黒い感情が胸の奥から這い出てくる。
歯を噛み締めて、刃物を握った。
そうして私はまた、人を――
硬い武器を取る手を、柔らかい感触が伝った。
突然なんなんだと意識が夢から引き剥がされる。
夢と別の次元に、まぶたの感覚がした。
ゆっくりと目を開ければ、私は白く広い部屋のベッドの上にいた。
病院だ。
生きてるのか、それともまた夢なのか頭が混乱する。
目が覚めた瞬間に、鬼獅子と戦って殺された時のことを思い出した。
あれから記憶がない。
あのとき私は、確かに殺されたはずなのに。
左手に温もりを感じて、そちらへ目を向けた。
「……」
ふわふわの銀髪をベッドにつけて、彼は私の手を握ったまま眠っていた。
好意の自覚 白銀の心 二 終→←最近入ってきた新人が仲間の心に強く住み着いているので家賃を請求できるんじゃないだろうか 四 終
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刹那*桜(プロフ) - noche/ノーチェさん» ありがとうございます!! そう言っていただけでめちゃくちゃ嬉しいです! これからも頑張っていきます(⸝ᵕᴗᵕ⸝⸝) (2022年9月13日 21時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
noche/ノーチェ(プロフ) - 続編おめでとうございます!ずっと前にお気に入り等々は済ましていたのですがコメントは初めてさせていただきます。いつもこの作品を見るために占ツクを開いているくらいとてもこの作品が好きです。これからも愛読させて頂きます!これからも頑張ってください! (2022年9月13日 20時) (レス) id: 958fbd2e0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年9月13日 20時