星を想うロマンチストたちよ 二 ページ47
「逃すな!始末しろ!!」
道信が逃げたのに気づき煉獄関の連中が追う。
しかし茂みから神楽と新八が出てきて、番傘と木刀を片手に応戦した。
道信は馬車をできるだけ速く走らせていた。
「わわわ!何をそんなに急いでるの?」
荷台が激しく揺れて、子供達は楽しそうにする。
「先生ってば!あれ?先生なんで泣いてるの?」
道信は、涙と鼻水を流していた。
――もっと早くに、あんな奴らと出会いたかった。
「甘いわ。ワシらから逃げられると思うたか」
「!」
屋根の上に乗った鬼人が、後ろから勢いよく槍で道信の心臓を貫いた。
鬼人は槍を抜くが、上から降ってきた女がその槍を掴んだ。
「あ゛?」
「!!」
その女、Aに道信は目を見開く。
鬼人は予期せぬ出現者に濁った声を出した。
Aは片手で槍を掴みながら、冷めた目で鬼人を見る。
「お姉ちゃん!」
道信は体の前方からしか血を流していないため、気づいていない子供たちがAを見て嬉しそうにしていた。
彼女は一度、子供たちに微笑み鬼人へ向き直る。
向き直った瞬間、その笑みは消え目には殺意が這い出る。
「何者だ、貴様」
「一度護ると誓ったなら、その誓いを履行する」
「人の皮を被った鬼を護ると?」
鬼人が鼻で笑うが、Aはそれに笑って返した。
「私は自分の護りたいと思ったものを護ります。例え汚れた手を持つ鬼だとしても」
Aはグッと槍を持つ手に力を込める。
「私は善なる神でなく、利己的で欲深な――外道の星なので」
にっこり微笑むと、勢いよく槍を横振りして鬼人を森の中に吹っ飛ばした。
「!!Aさ……」
道信はそれを見て驚いていて、胸元を押さえながら彼女を見る。
「ここで安静にしていてください」
Aは馬車から降りて鬼人の方まで走っていった。
「……小刀が守ってくれる、か」
道信はフッと笑う。
懐の小刀が少しだけ軌道を逸らしてくれたようだが、彼は心臓を突かれていて。
――この傷では、もう長くないな。死ぬならばせめて
「彼女が逃げる隙を作らならなければ」
道信は馬車を止めて、胸を押さえながらゆっくり降りる。
「せんせー?」
子供たちは道信を不思議そうに見て。
彼は決して子供たちに前体の血は見せず、背中を向けたままで。
「ここで待っていなさい。この先から、運転手はAさんだ。すぐ連れてくるよ」
道信は優しい声でいい、ふらつきながらもAの元に向かった。
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2022年8月29日 18時