手の届かない太陽と星 一 ページ40
「なあ、とっつぁん。最近Aさんを屯所で見ないんだが」
真選組屯所の部屋で、近藤はタバコを吸う松平に話しかけた。
それに続いて土方や沖田も話に加わる。
「街で見かけることはあるが……何してるのか聞いても話しちゃくれねェ」
「もしかして潜入でもしてるんですかィ?」
松平はフーッとタバコの煙を吐き一拍おいて
「あー、それな……Aちゃんにはちょっと、遊女やってもらってるんだわ」
松平の言葉で、部屋に静寂が生まれる。
『はあァァァ!!?』
三人の声が大きく響いた。
「ちょ、え!?とっつぁん何いってんの!?」
「落ち着け近藤。地下遊郭、吉原桃源郷は暗部に支えられて幕府に黙殺されている。法律にとらわれない超法規的空間だが……一度監査に入ることに踏み切ったんだ」
「だったらなんで女のAを。ここには男が大量にいるだろ」
土方は眉を寄せて松平に問う。
相当、Aを遊郭に入らせるのが嫌なようで苛立っていた。
「女だからだ。男だったらオメー、監査の方法は客か見世物番として入ることぐらいだが……出ていく金にも限度がある。監査に入った隊士がハメを外して真選組の情報をタレ流し、なんてこともあるかも知れん。その分、Aは女として侍らせる側、間違ってもあそこの甘い空気に流されたりはせんだろう」
それに、と松平は続ける。
「アレは並の女より強い。自分なりの防衛策も考えているから大丈夫だろ。Aが一線を護れるようにこっちも手を貸しているしな」
「Aは確かに強いが……」
「でもそれ、『あの人』が聞いたら激怒しませんかィ?」
沖田はA大好きなとある人物を思い出して尋ねた。
「ああ、戦か。奴には話を通してある」
『!!』
それを聞いて近藤たち三人は驚いていた。
「アイツ許可したのか……」
「戦なら猛反対すると思ったんだが」
「奴はただのシスコンじゃねーよ」
松平も当初は戦が騒ぐと思っていたが、吉原の話をしたときの彼は意外と冷静だった。
その件を聞いたAが、真面目に仕事に務めようとしていたからである。
『Aは、やりたいことをやれ。何かあったら兄ちゃんが何とかしてやる』
戦の言葉を思い返して松平は目を伏せる。
「ヤツは思考を重ねた上で、妹の意思を尊重して動く。その策に穴があるなら、自分がその穴に突っ込んで平に舗装する……真のシスコンだ」
タバコの煙を吐きながら、少し敬意を持ってつぶやいた。
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刹那*桜(プロフ) - アイナさん» あけましておめでとうございます!10個目でも見に来てくださって本当に嬉しいです。ありがとうございます! (2023年1月6日 4時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
アイナ(プロフ) - あけましておめでとうございます。そしてシリーズ数二桁突入おめでとうございます。今年もぜひ、夢主ちゃんとお兄様の活躍と銀魂キャラたちの奮闘を拝見させてください! (2023年1月2日 10時) (レス) id: 503469204d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年1月1日 3時