第55話 ページ8
『三輪くん、作戦終了よ』
緑色の閃光が本部へと飛んでいくのを目視した直後、三輪のヘッドフォンに通信が入った。
『太刀川くんと風間さんが緊急脱出したわ。奈良坂くんと章平くんも撤収中よ』
「・・・ッ！！」
納得いかないといった表情で、悔しそうに歯噛みする三輪。
その隣で出水が「くああ〜〜！負けたか〜〜！」と緊張感のかけらもない声をあげる。
「つーか迅さん6対1で勝ったの！？太刀川さんたち相手に！？黒トリガー半端ねーな！」
そう言って頭を掻く出水は、三輪と違って嬉々とした表情を浮かべていた。
そして一瞬前まで敵として対峙していた嵐山隊と楽しげに会話を始める。
三輪はそんな出水の割り切りの良さに心の中でため息をつきながら、別のことを考えていた。
わかっていないんだ。この人たちは、何も。
「・・・」
「？・・・どうしたんだ、三輪」
黙り込んだままの三輪の顔を怪訝そうに伺いながら、嵐山はそう尋ねる。
すると三輪は真正面から嵐山を睨み、吐き捨てるように言葉を紡いだ。
「・・・あんたたちはわかってないんだ。
家族や友人を殺された人間でなければ、近界民の本当の危険さは理解できない。
近界民を甘く見ている迅は、いつか必ず痛い目を見る。そしてその時にはもう手遅れだ」
「甘く見てるってことはないだろう。迅だって近界民に母親を殺されてるぞ？」
「・・・！？」
いつにもまして真剣な表情の嵐山。
彼の口から零れた衝撃の事実に、三輪は絶句するほかなかった。
「5年前には師匠の最上さんも亡くなってる。親しい人を失うつらさはよくわかってるはずだ。
近界民の危険さも、大事な人を失うつらさもわかったうえで・・・
迅には迅の考えがあるんだと、俺は思うぞ」
優しく、しかし確かに語気の強い言葉で諭された三輪は再び悔しげな表情を浮かべた。
そして近くにあった外灯に「くそっ！！」と拳を打ちつける。
ガン！という鈍い音が、夜の公園内に寂しく響き渡った。
怒りの行き場をなくして心に蟠りを残すばかりの三輪は、ふと何かに気づいたように顔を上げる。
「(なら・・・どうしてAさんは玉狛の・・・迅の味方をした？)」
彼女は近界民に対して、特に恨みも親しみも持っているようには見えなかった。
それなのに何故、近界民を庇うのだろう？いったい彼女は何を考えている？
三輪は一度だけ寒空に浮かぶ月を見上げ、小さな舌打ちを残して本部への帰路を辿った。
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
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シロナ(プロフ) - 世界さん» 温かい応援をありがとうございます！世界さんが楽しんでいただけたのなら幸いです。できる限り更新のほうも善処しますので、これからもよろしくお願いいたします。 (2016年6月6日 22時) (
レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
世界 - とても面白いです（≧∇≦）更新頑張ってください。 (2016年6月6日 18時) (レス) id: 5b7a28e31b (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - 銀河さん» 温かい応援ありがとうございます！銀河さんのご期待に沿えるように、精一杯更新していこうと思います。私事により更新ペースはかなり遅いですが、よろしければ気長にお待ちいただけると嬉しいです。 (2016年1月19日 20時) (レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
銀河 - とても面白かったです！シロナsが書く文章がとても読みやすかったです。頑張ってくださいね。 (2016年1月17日 7時) (レス) id: 550193059d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シロナ | 作成日時：2015年10月23日 23時
