第53話 ページ6
殺伐とした空気が辺り一帯を包む警戒区域内。
次第に激化していく二ヵ所の戦闘を望遠鏡越しで交互に見ながら、Aは呟いた。
「・・・私、ここにいる意味ある？」
これは恐らくあれだ。迅と嵐山隊の活躍で、刺客が玉狛までたどり着けないパターンだ。
きっと迅はあえてこの作戦を選び、自分の思い通りに駒を動かして戦っているに違いない。
そして今、玉狛の屋上でただ望遠鏡を覗いているだけの自分も、迅の持つ駒の一つ。
ざっくり言えばAは、黒トリガーという切り札・・・という名の“牽制役”なのだ。
一緒に戦おうなどと言っておきながら自分を駒にした迅に呪詛を並べつつ、妙に澄んだ空を仰ぐ。
闇色に広がるそこには、粒ほどに小さな光がたくさん張り付いていた。
月よりも無機質な、かといって人工の光よりも優しい輝きを放つ星たち。
それらは全て、時に見え隠れしながらも地上にいる人々を見下ろしている。
そういえば、『人は死んだら星になる』と、そんなことを言っていたのは誰だったか・・・
しばらく星空を眺めながら考えていたが、途中で面倒になって考えるのを止めた。
誰が言ったかなんてどうでもいい。どうせ作り話なのだから。
どんな手を使おうと死んだ人間は帰ってこないし、温もりなど永遠に失われたままだ。
だから作り話。絶対にあるはずのない・・・残酷で残虐な大人の決まり文句。
生死に関しては誰よりも冷めきった感情を持つと自負しているAは嘲るように薄く笑った。
「(あぁ・・・思い出した。あんなことを言ったのは・・・)」
ー“いい？A。人はね、死んだら星になるのよ。
星になった人たちは、空からずっと、私たちを見守っているの”ー
・・・楓だ。特殊任務部隊オペレーター、十六夜楓。
二年前、Aが不安定だった時期に半ば強制的に本部の屋上へ連れ出され、聞かされた話だ。
天体観測が趣味で星を愛する彼女は、その謎の理論を本気で信じているらしかった。
信じている人を糾弾するのは気が引けたので、さすがのAもその時は何も言わなかったが。
「・・・あ、オリオン座」
綺麗に三つ並んだ星を見つけて、Aはそう言葉を零した。
楓から教えてもらった星座のひとつ、冬の大三角形の一部であるオリオン座。
それなら残りの二つ、おおいぬ座とこいぬ座も近くにあるはず・・・
暇を持て余したAは望遠鏡を覗くのを止め、とうとう星座探しに興じ始めるのだった。
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
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シロナ(プロフ) - 世界さん» 温かい応援をありがとうございます！世界さんが楽しんでいただけたのなら幸いです。できる限り更新のほうも善処しますので、これからもよろしくお願いいたします。 (2016年6月6日 22時) (
レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
世界 - とても面白いです（≧∇≦）更新頑張ってください。 (2016年6月6日 18時) (レス) id: 5b7a28e31b (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - 銀河さん» 温かい応援ありがとうございます！銀河さんのご期待に沿えるように、精一杯更新していこうと思います。私事により更新ペースはかなり遅いですが、よろしければ気長にお待ちいただけると嬉しいです。 (2016年1月19日 20時) (レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
銀河 - とても面白かったです！シロナsが書く文章がとても読みやすかったです。頑張ってくださいね。 (2016年1月17日 7時) (レス) id: 550193059d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シロナ | 作成日時：2015年10月23日 23時
