第58話 ページ11
「・・・まったくお前は意味不明だな」
自販機の前でぼんち揚げを齧る太刀川が、いかにも不満げと言わんばかりに呟く。
「何あっさり『風刃』渡してんだよ。勝ち逃げする気か？
今すぐ取り返せ！それでもっかい勝負しろ！」
「ムチャ言うね太刀川さん・・・」
ずびし、と指をさして再戦を要求してくる元ライバルに呆れ笑いを浮かべる迅。
しばらく無言を貫いていた風間も、迅に尋ねたいことがあるのか口を開いた。
「黒トリガー奪取の指令は解除された・・・
『風刃』を手放す気があったなら、最初からそうすればよかっただろう。
わざわざ俺たちと戦う必要もなかった」
釈然としない様子の風間に、迅は「いやあどうかな」と缶飲料のフタを開けながら返す。
「昨日の段階じゃ『風刃』に箔が足りなかったと思うよ。
太刀川さんや風間さんたちのおかげでやっと、鬼怒田さんたちを動かせたって感じかな」
「・・・A級上位の俺たちを派手に蹴散らすことで、『風刃』の価値を引き上げたということか」
「ご名答。それが『プランB』」
何食わぬ顔でそう言う迅に対し、「まったくムカつくやつだ」と腕を組む風間。
しかしながらその表情には、不満の色は窺えても怒りの色などは一切感じられない。
それは風間だけでなく、太刀川にも同じことが言えた。
「そうやって『風刃』を売ってまで、近界民をボーダーに入れる目的は何だ？何を企んでる？」
ぼりぼりとぼんち揚げを貪りながら、太刀川は迅にそう問う。
「・・・城戸さんにもそれ、訊かれたなー・・・」
困ったように頭を掻いてから、迅はぼんち揚げを齧りつつ二人のほうを向いた。
「その、うちに新しく入った遊真ってのが、けっこうハードな人生送っててさ。
おれはあいつに、『楽しい時間』を作ってやりたいんだ」
「『楽しい時間』・・・？それとボーダー入隊がどうつながる？何か関係あるのか？」
太刀川がそう返すと、迅はぼんち揚げを手に持ちながらやけに真剣に答えた。
「おれは、太刀川さんたちとバチバチ戦い合ってた頃が最高に楽しかった」
いつになく率直な迅の言葉に、風間と太刀川は驚いたような顔をする。
迅は手に持っていたぼんち揚げをぽいと口に放り込み、言葉を続けた。
「ボーダーにはいくらでも遊び相手がいる。きっとあいつも毎日が楽しくなる。
あいつは昔のおれに似てるからな」
そう零した迅の目は、複雑な色を宿しながらも確かに蒼く澄んでいた。
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
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シロナ(プロフ) - 世界さん» 温かい応援をありがとうございます！世界さんが楽しんでいただけたのなら幸いです。できる限り更新のほうも善処しますので、これからもよろしくお願いいたします。 (2016年6月6日 22時) (
レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
世界 - とても面白いです（≧∇≦）更新頑張ってください。 (2016年6月6日 18時) (レス) id: 5b7a28e31b (このIDを非表示/違反報告)
シロナ(プロフ) - 銀河さん» 温かい応援ありがとうございます！銀河さんのご期待に沿えるように、精一杯更新していこうと思います。私事により更新ペースはかなり遅いですが、よろしければ気長にお待ちいただけると嬉しいです。 (2016年1月19日 20時) (レス) id: 16408a5fe0 (このIDを非表示/違反報告)
銀河 - とても面白かったです！シロナsが書く文章がとても読みやすかったです。頑張ってくださいね。 (2016年1月17日 7時) (レス) id: 550193059d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：シロナ | 作成日時：2015年10月23日 23時
