検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:46,136 hit

第47話 ページ49

タイムアタックという余興も終わり、誰もいなくなった訓練室。


その出入り口の横に置かれているデバイスには、先程までの戦闘の様子が映し出されていた。


映像の中の女性は桜色の戦闘服に身を包み、弧月を片手に縦横無尽に暴れ回っている。


的確に急所を狙って斬りつけた後、180度方向転換をしてまた別の敵へ斬りかかる。


動きはほとんど動物のそれだが、敵撃破の効率からすると確かに思考を巡らせながら動いていた。


戦闘体には珍しい長髪を、まるで意志でも通じているかのように躍らせて戦うA。


何も知らない人から見れば、ただの戦闘バカにしか見えないだろう。


それもそうだ。実際Aにはもう、戦う以外に生きる目的がない。


・・・いや、“戦う”以外の手段を選んではいけないと言ったほうが正しいか。


彼から託されたその願いは、Aの手足を縛る大きな枷。


それは決して手放すことのない十字架であり、彼とAを結ぶ最後の糸でもあった。


夕日さえ徐々に傾き、訓練室にも陰りが見え始める頃。


室内の照明が点くか点かないかという微妙な時間に、訓練室前の廊下を歩く影がひとつ。


その影は長い黒髪をなびかせ、足早に外へと向かっていた。


脇には何故か、組み立て式の天体望遠鏡が抱えられている。


「ごめん紗夜、今日はどうしても、行かなきゃいけない大事な用があるんだ」


書類地獄から抜け出してきた罪悪感が湧いたのか、Aは小さくそう呟いた。


実際謝るべき相手はここにはいないので、伝わるはずもないのだが。


懺悔しながらもAはなお歩を速め、目的地へと急ぐ。


ついには小走りになって、誰もいない廊下を駆けだした。


紗夜に見つからぬようにと人気のない通路を選んだのは正解だったようだ。


おかげで誰にも捕まることなく、Aはボーダー本部を後にできた。


空を見上げてみると、既に日は落ち、辺りは薄暗い紺に包まれようとしている。


「うわっ暗っ・・・ちょっと遅かったかな」


約束の時間には間に合わないかもしれないと焦るA。


約束を交わしていた相手に連絡を取ろうと携帯を出すと、新着メールが一通届いていた。


Aはすぐさまアイコンをタップして、届いたメールを確認する。


そのメールの差出人は・・・


「・・・ははっ、視えてたな、あのエリートめ」


心なしか安心したようにそう零すと、Aは再び目的地へと走り出す。


楽しげな笑みと足取りで、いざ、玉狛へ。

続編のお知らせ→←第46話


ラッキーアイテム

革ベルト

ラッキーナンバー

8

ラッキー方角

西 - この方角に福があるはずです


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (26 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
47人がお気に入り
設定タグ:ワールドトリガー , 迅悠一   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:シロナ | 作成日時:2015年7月20日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。