第4話 ページ5
「ま、そういうこと。ぼんち揚げ食う？」
そう言って差し出された袋からぼんち揚げを一枚取り出し、齧りつく紗夜。
「まったく・・・お前はどうしてそう掴みどころがないんだ」
「・・・さぁね。おれにもよく分かんないや」
またそうやって飄々と受け流す、お前は何を考えているんだ。
そう噛みつきたかった紗夜だったが、迅が何かを“視ている”ような気がして言葉を止めた。
「へぇ・・・何か面白いことになりそうだな・・・」
暗躍という暗い趣味を持つS級隊員、迅悠一がさぞ楽しげな声で呟く。
「相変わらずすっごい悪人面だな・・・今度は何が視えたんだ？」
「悪人面、って・・・ひどいなぁ城守ちゃん」
頬をポリポリと掻いてから、まだ確定したわけじゃないんだけどね、と続ける迅。
「城守ちゃんトコの隊長さんが、寝坊して会議に遅れる未来が視えた。
その会議にはおれも呼ばれてて、なんだか面白いことが起きそうなんだ」
「寝坊・・・うちの隊長が？ありえんな」
腕組みをしてなぜか堂々とそう言い張る紗夜。
「そもそも寝坊する理由がない。昨日は非番だったし、そう疲れてもいないはずだ」
「だと、いいんだけどねぇ・・・」
迅はぼんち揚げの最後の一枚に齧りつき、よし、と踵を返して歩き始めた。
「ちょ・・・おい、どこに行くつもりだ、迅？」
「隊長さんを起こしてくるよ。ちょうど彼女に用もあったしね。
城守ちゃんもいつまでも落ち込んでないで、任務に励めよ〜」
「・・・はっ！？お、お前！いくら迅と言えども、Aに手を出したらただじゃ済まないぞ！
そんなことしたらイーグレットでハチの巣にしてやるからな！！」
「うおぉ怖い怖いその顔はヤバいよ城守ちゃん。・・・大丈夫だって、手なんか出さないよ。
Aちゃんにはおっそろしいボディーガードが何人もついてるからね〜」
迅はもと来た道を歩きながらひらひらと手を振る。
「まったく・・・」
そんな迅の背を見送り、やがて彼の姿が見えなくなった後、紗夜は寂しそうな顔をして呟いた。
「“城守ちゃん”、か・・・」
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作者名：シロナ | 作成日時：2015年7月20日 10時
