『ワールドトリガー』私の彼氏は黒トリガー (ページ32)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:46,164 hit

第30話ページ32

「・・・たった今から、お前たちはチームだ。

　このチームでA級昇格、そして遠征部隊選抜を目指す！」

チーム結成の場に立ち会わせたAが、ささやかに音の出ない拍手をする。

遊真がボーダー入隊を断ったりといろいろあったが、確かに今、ここでチームが結成された。

初々しい、私もこういう時期があったなぁとAは思いを巡らせる。

「(九重隊、か・・・)」

Aが愛したその隊はもう、なくなってしまった。

桜色の隊服に桜と刀のエンブレムという、なんとも派手で和風な隊だった。

解散した後もAは九重隊を忘れることができず、戦闘体は今も九重隊の隊服だ。

他の部隊の混乱を防ぐためエンブレムは外してあるが、ちゃんとした隊服もまだ設定してあった。

なんとなく、消してはいけないものだと感じたのだ。

まぁ、こんな暗い話、今はどうでもいいか。

自分の暗い気持ちを払拭するように、Aは三人の頭を撫でまわす。

「がんばれ、新生チーム！私も全力でサポートするよ！」

先輩だからねと胸を張るAに、三人は「ありがとうございます」と笑った。

「リーダーは三雲君なんだよね。ちゃんと引っ張っていかなきゃだめだよ？」

「は、はい！」

「ま、何か困ったことがあれば相談に乗るし、大体いつも本部ないしは玉狛にいるから。

　・・・あ、ひょっとしなくても私、名前以外本格的に自己紹介してない？」

修と千佳がコクリと頷く。確かに名前しか聞いていない。

「私は霧玄A。本部所属、城戸司令直属のS級隊員。

　歳は19だけど、学年は迅の一つ上だよ」

「Aちゃんは二月生まれだからな。誕生日的にいうとおれと二か月しか違わないんだ」

あぁなるほど。だからお互いタメ口なのか。

迅の補足で修は納得した。

その隣で千佳は、「二月生まれ、わたしと同じですね」とAに話しかけている。

「千佳ちゃんも二月なんだ。仲間だね」

そう言って笑むA。そんなAの服の裾を、遊真がくいくいと引っ張った。

「ねぇAさん。『ガクネン』ってなんだ？それでトシが変わるのか？」

「えーと・・・何て説明したらいいんだろう・・・実力派エリートさん？」

「はいはい・・・詳しい話はリビングでな。じゃボス、失礼しました～」

三人と一人を引き連れて、迅は支部長室を後にする。

今朝の紗夜からのメールなんて、Aはもうすっかり忘れていた。