『ワールドトリガー』私の彼氏は黒トリガー (ページ27)

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第25話ページ27

近界民に連れ去られた人間の処遇について。

千佳が遊真に尋ねたかったことは、大体そういう内容であった。

遊真の話によれば、それは連れ去られた“国”によるらしい。

しかし基本的にどこの国でもトリオン能力の高い人は貴重らしく、待遇は悪くはないそうだ。

包み紙をくしゃくしゃと丸めながら、「チカとか超大事にされるかも」と遊真が言う。

「っていうか、そういう話ならAさんのほうが詳しいんじゃない？ボーダーだし」

会話には参加せずに話だけ聞いていたAが、ストローから口を離して遊真の問いに答える。

「私はそこまで詳しくはないよ。私の仕事は基本的には三門市の防衛だからね」

ちょうど空になったドリンクを置き、二人にそう笑いかけるA。

『基本的には』という部分に二人は何か引っかかるものを感じたが、あまり気にせず話を続けた。

「連れ去られた人が生きてる・・・っていう可能性は、ふつうにあると思うよ」

「そっか・・・そうなんだ・・・」

「・・・誰か、親しい人が攫われてる、とか？」

安堵の表情を浮かべた千佳にAがそう問うと、千佳は首を横に振った。

「い、いえ・・・ちがうんです。ちょっと気になっただけで・・・」

「・・・おまえ、つまんないウソつくね」

遊真の指摘は図星だったのか、千佳はギクリと肩を震わせる。

少し視線を泳がせてから、観念したかのように千佳が語りだした。

小学校のときの友達と・・・実の兄が攫われた。

その話を聞いたとき、Aの頭の中には何故か三輪と風間の顔が浮かんでいた。

「(・・・違う。あの二人とこの子は違う。

　この子の場合は攫われてるだけで、あの二人の場合は殺されてる。一緒にするな。)」

目の前の二人に悟られない程度に頭を振り、つまらない考えを打ち消す。

すると同時に、パーカーのポケットから電子音が鳴り響いた。

バイブレーションのタイプからすると、メールのようだ。

ポケットに手を突っ込んで携帯を取り出し、メールを開く。

差出人は迅悠一。件名にはやはり『実力派エリートだよ』と書かれていた。

苦笑いしながらメールを読んでいると、「どうしたの？」と横から遊真が覗いてくる。

その逆側の横からも、千佳が申し訳程度に顔を出していた。

「迅からのメールだよ。会議が終わったから合流しよう、っていうね」

そう言いながらAは携帯を仕舞い、空の紙コップと紙袋を持って立ち上がった。