首つり自殺事件/巳扇大和 ページ40
その日、王神谷中を纏め上げる者――樋崎正彦と名乗る校長はお茶をたしなんでいた。
先程漸く、全ての案件を片付け息をついていたのだ。今日は平和だな、と呟いて暫時休憩しようと机の上に山積みになっている参考書に手を伸ばした時――足音が聞こえてきた。
学校の底が抜けるのではないかというくらいのどたどたとあわただしい足音。正彦は立ち上がり、また彼奴らかとため息を吐いた――のだが。
彼のもとに疾走してきたのは
葉月「樋崎校長!」
生徒会長である、優秀な葉月篤人であった。正彦はアニメの如く目を丸くさせた。何故ならば、廊下を一度も走ったことない、自身が信頼を寄せる生徒会長であったのだから。
だが、篤人はそれどころではないのだ。
葉月「2年3組が……!」
正彦「……また問題を?」
抑えきれぬ怒りを抑えるように、眉間を指でつまんだ。
だが、内心火山が噴火している為顔や声、体中から濛々と激怒があらわになった。いつの日からか、2年3組に対して怒りをぶちまけている為彼の頭が少しずつ薄くなってきている。
葉月「ええ」
正彦「今度は誰かね」
葉月「大和です。巳扇、大和」
正彦「自 殺癖を持っている彼奴か」
あからさまに溜息を吐いて「有難う」とお礼を言うと、立ち上がった。
.
大和は自 殺をしていた。
つまらない、見なくとも判ってしまうような授業を抜け出して、運動場にある王神谷中自慢の大木まで縄を持って近づいていた。
この大樹は約400歳と言われていた。400年前に生れてから、一度も欠けることなく無事に成長を遂げたのだ。故に目を見張るほどに立派である。……人一人吊るせるくらい。
直哉「……大和? 何やってるんだ」
大和の友人である酒上直哉が彼女に声をかけた。
3年2組の授業は体育であった為、運動場で彼等は体育をしていた。だが、休憩時間になったと共に声を飛び交わしながら一点の場所に集っていく。それを見た直哉も何事かと、出向いたのだ。するとそこにいたのは大和だった。いつも通りの。
大和「あ、直哉くん。いぇい」
直哉「嗚呼。……ところで大和。何をやっているんだ」
大和「見て判るだろう。首つり自 殺だよ、首つり。この大樹は人一人支えられるからね、とてもいいのだよ」
上手に縛られた首つり用の縄に首をかけぶら下がっている大和は顔色一つ変えずに言った。
直哉はその返答に暫く沈黙を走らせ、無表情で「そうか」と告げた。
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ぽんず(プロフ) - 更新しました! (2021年7月8日 17時) (レス) id: 22afa4f87f (このIDを非表示/違反報告)
ぽんず(プロフ) - 更新します! (2021年7月8日 17時) (レス) id: 22afa4f87f (このIDを非表示/違反報告)
ダークライト(プロフ) - 更新しました (2021年2月21日 14時) (レス) id: 7e6182f5bc (このIDを非表示/違反報告)
ダークライト(プロフ) - 更新します (2021年2月21日 13時) (レス) id: 7e6182f5bc (このIDを非表示/違反報告)
白目黒口(プロフ) - 更新しました。宵城様の英文が少し間違っていたので勝手ながら修正させて頂きました。 (2021年1月24日 14時) (レス) id: e62e7575d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:2年3組weirdoes募集企画参加者 x他11人 | 作者ホームページ:無いのです
作成日時:2020年12月16日 19時