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「まあ、ええわ…ほらA、行くで?」
センラさんは私の手を取る。
そのまま自然に指を絡めて、きゅっと握り合った私たちは、お互いに顔を見合わせ笑顔で、パーク内部へと歩き出した。
*
軽快な音楽が流れ、時折何処かのアトラクションから歓声が聞こえる。
向こうのほうにあるワゴンからは甘いポップコーンの香りが漂ってきている。
「何か、乗りたい物とかある?」
隣のセンラさんが聞いてくれたけど、私は首を横に振った。
「ううん、こうして歩いてるだけで十分」
「いや流石に…、せっかく来たんやから何か乗ろうや」
フリーパス分乗らなもったいないやろ、と言いながら、隣で片手で器用にガイドマップを広げているセンラさん。
「うん、…じゃあ、あんまり待たないので」
個人的には、アトラクションは大好きなんだけど、沢山待たなければいけない物は避けなければ…と思っていた。
(沢山待つと、バレそうだし)
私の恋人のセンラさんは、普段は会社員をしながら、“歌い手”というネット中心の音楽活動をしている。
ライブもしているし、界隈では人気者だから、バレる可能性は十分にある。
別の意味でキョロキョロし出した私を横から呆れるように見たセンラさんは、
「Aは気にしすぎや、そんな不審な動きしてたら逆に怪しまれんで」
と、私の頭をポンポンと軽く叩いた。
直接口にしたわけじゃないのに思考を読まれていて、恥ずかしいような、擽ったい気持ちになった。
*
「ハロウィンバージョンになってるんやね?」
「そうみたい、…いつもより怖くないかも」
古い洋館ホラー系アトラクションに、他の人の流れについていくように入る。
怖くない、気はしたけど、暗いからそれだけで何だか心細い。センラさんから離れないように服をぎゅうぎゅう握ったから、「だーいじょうぶやって」と笑いながら言われた。
その後すぐ、するりと回ってきた腕に腰を抱き寄せられた時は、別の意味で悲鳴を上げそうだった。
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しろ鮎(プロフ) - 白雨さん» わー!白雨さーん!コメント下さってたんですね、返事がめちゃくちゃ遅くて申し訳ないです…ありがとうございます!ハロウィンにかこつけてイチャイチャしてるだけな感じですが(笑)、書いてて楽しかったです。次も今準備中なので(12月なのでアレです)良ければ〜! (2020年12月3日 22時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - 新作出してらしたんですね……!今回の短編集も四人の特色がよく出ていて愛らしさを感じる雰囲気でした!ハロウィンのお話を書かれるとは予想していなかったので新鮮な感じです(笑) やっぱりしろ鮎さんの書くお話大好きだなーと思いながら読ませて頂きました(*´艸`) (2020年11月24日 22時) (レス) id: f9e7441818 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - ちぇろさん» ちぇろさんご無沙汰してました、今作もお付き合いありがとうございました!一つのテーマを設けて作るの楽しかったので…またやろうかな?と思い始めてしまいました笑 またよろしくお願いしますー! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - リセットさん» 初コメありがとうございます、前作も読んで下さったんですね…嬉しいです!ときめきをお届けするのが私の作者としての目標なので、リセットさんにはお届けできたようで良かったです〜! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - せせ@れいとうるぅれっとさん» コメントありがとうございます、最後までお付き合い頂きありがとうございました〜!自己満足の小説なんですが、お楽しみ頂けて良かったです!またよろしくお願いします〜! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2020年10月11日 6時