【短編集】Lovers in Halloween【u/s/s/s】

・ ページ14

.



「ただーいまー」

「おかーえりー」


今日はわたるの方が帰りが早かったらしい。
靴を脱ぎながら玄関で声を出すと、私の言葉と同じ口調で返事がかえってきた。


「おつかれーい」

リビングへ入ると、わたるも先程帰ってきたばかりのようで、脱いだ上着を手にしていた。

同じように私も上着を脱いだ。
コスプレとか慣れないことをしたせいか、いつもよりも疲れている気がする。夕飯は簡単なものでいいか。

「んー、ホント疲れた…ご飯、カレーでいいかな？」

「おー、良いじゃんカレー…」

私の言葉にそう返事をしてくれたわたるが、
「あ！じゃあさ…」と、スマホの画面を操作し始めた。


「？」

そして、身支度をしてキッチンへ立とうとした私に、スマホの画面を見せてくる。


「俺も手伝うからさ…今日はこれにしない？」

「“おばけかぼちゃのハロウィンカレー”？わ、可愛い！」


わたるが見せてくれたレシピは、普通のカレーだけど、星形のにんじんやおばけ形に切り抜いたチーズが乗せられたカレーだった。

子供のいる家向けな感じだけど、今ある材料で出来るし、やっても良いかも。


そこで、ふと浮かんだ疑問を口にした。

「ハロウィンは明日だけど？」

「ま、いいじゃん」

心なしか、わたるがご機嫌そうに見える。

「…もうハロウィン気分なの？」

なんだか可愛らしいな、と、冷蔵庫に向かい笑いながら言うと、思わぬ言葉が返ってきた。



「…まあね、誰かさんのハロウィンコスプレ写真も見たことだしね？」


「………え」


冷蔵庫を開けようとした自分の動きがピタリと止まる。

そのまま、固まった首を、ぎぎぎ、と音がしそうなくらい無理やり動かしてわたるの方を見た。


見た先の彼は、ニヤニヤと笑ってスマホを眺めている。

間違いなく、さっき会社で撮ってT◯itterにあげた、私の魔女コスプレの事を言っているに違いなかった。




.

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す