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「…え…」
そう言われ、先程思ったことをもう一度思い返してみる。
明るいキッチンで、お揃いのエプロンの私と子供がお料理して、それを少し離れた所から笑って見ている、_________
そこまで妄想して、ぶわっと顔が熱くなった。思わず視線が下がる。
そっと坂田さんの顔を見遣ると、未だに不安そうにこちらを見ていて。
その彼に、そっと言った。
「…その、坂田さんが嫌じゃなければ、居て欲しいなあ、って思ってますけど…」
恥ずかしさで俯いてしまい、語尾がしぼんでしまったけど、伝わっただろうか。
いつの間にか向かい合うように立っていた目の前の坂田さんが少し動いた、と思った次の瞬間には、私は彼の腕の中にいた。
ふわっと彼の香りがして、力強い腕が私の身体に回されている。
「良かったあ」と、どこか幼げな声音が耳元で聞こえて、私の口からも笑い声が漏れる。
お互いに、まだはっきりと口にする段階ではないけど、それぞれの考える未来に、目の前の恋人が居ることが確認できて、嬉しくなった。
しばらく私の肩口に顔を埋めていた坂田さんが、急に顔を上げて、キョロキョロと辺りを見回した。
「?」
何事かと思って顔を上げると、もうその時には目の前に彼の顔があって。
そのまま、唇が重なった。
急な事で目を閉じるのも忘れる。
半分伏せられた彼の紅い瞳と長い睫毛が見えて、心臓が跳ね上がった。
「誰も居らんかったから、…我慢出来らんくて」
唇が離れて、至近距離で囁くようにそう言う坂田さんに何も言えず、ただ彼のシャツを掴んで、頭を彼の胸に寄せた。
そうすると彼は、私の頭をポンポンと撫でてくれた。
「…何年後か分からないけど…子どもと一緒に、今日教えたカレーとゼリー作ろうかな?」
独り言のように、でも同意を求めるように坂田さんに言うと、
「俺は料理は出来らんから、食べる担当でええわ」
と、彼らしい答え。
「ふふっ、今日はかぼちゃのプリン作ってあります、甘さ控えめにしたから、後で食べましょ」
そう言って、彼の腕に抱きついた。
彼はそれに笑って頷き、二人でまた家までの道を歩き出した。
それは、未来へ続く道のようで。この先も、この人と歩いて行けたらな、と、幸せな気持ちで帰宅する夜だった。
ver. red END
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しろ鮎(プロフ) - 白雨さん» わー!白雨さーん!コメント下さってたんですね、返事がめちゃくちゃ遅くて申し訳ないです…ありがとうございます!ハロウィンにかこつけてイチャイチャしてるだけな感じですが(笑)、書いてて楽しかったです。次も今準備中なので(12月なのでアレです)良ければ〜! (2020年12月3日 22時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - 新作出してらしたんですね……!今回の短編集も四人の特色がよく出ていて愛らしさを感じる雰囲気でした!ハロウィンのお話を書かれるとは予想していなかったので新鮮な感じです(笑) やっぱりしろ鮎さんの書くお話大好きだなーと思いながら読ませて頂きました(*´艸`) (2020年11月24日 22時) (レス) id: f9e7441818 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - ちぇろさん» ちぇろさんご無沙汰してました、今作もお付き合いありがとうございました!一つのテーマを設けて作るの楽しかったので…またやろうかな?と思い始めてしまいました笑 またよろしくお願いしますー! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - リセットさん» 初コメありがとうございます、前作も読んで下さったんですね…嬉しいです!ときめきをお届けするのが私の作者としての目標なので、リセットさんにはお届けできたようで良かったです〜! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - せせ@れいとうるぅれっとさん» コメントありがとうございます、最後までお付き合い頂きありがとうございました〜!自己満足の小説なんですが、お楽しみ頂けて良かったです!またよろしくお願いします〜! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2020年10月11日 6時