冬の海ーside kazuー ページ31
海岸についても、俺の後ろを歩く彼女。
風と砂浜に足を取られながらよろよろ歩くAを見て、前よりも痩せたことに気づいた。
「ねぇ、ちゃんと食ってる？」
A「え？」
「だから、ちゃんと食ってる？」
A「ﾌﾌ、こう見えても一応主婦よ？ちゃんと料理ぐらいしてるわ」
「おまえは食ってるの？」
A「･･･どうして？」
「痩せた･･･でしょ？」
彼女は一瞬泣きそうな顔をしたように見えた。
でも俺が見てることに気づくと、小さく微笑んでまた前を見て歩き出した。
A「カズ、私ね･･･冬の海って好きなの」
「･･･」
A「子供の頃も海の近くに住んでたのね･･･って言っても私が住んでた海はこんな砂浜があるような海じゃなくって、船着場があるだけのただの港だったんだけど。それに、お世辞でも綺麗な海とは言えなかったし･･･。でも、よくその港に行って海見てたんだよね･･･。その時から夏よりも冬の海の方が好きだったなぁ･･･」
「冬の海･･･？」
A「うん」
「なんで？」
A「ﾌﾌ、ナイショ」
「は？(笑)先にふったのはあなたでしょ？」
A「そうだったね(笑)」
「じゃあいいです、もう」
A「そう言うと思った(笑)」
「ったく･･･なに？気になる」
A「ﾌﾌ、気にして(笑)」
「めんどくせっ」
A「ﾌﾌ･･･」
俺の言葉をはにかんだ笑顔で聞く彼女が、どうしようもなく愛おしく思えて、このまま時間が止まればいいのに･･･って、そんなことを考えてる自分がいる。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、Aは急に立ち止まると、体を海のほうへ向け、小さく深呼吸した。
流木が足元に転がっていて、風と波の音だけが聞こえてる。
周りに人の姿はなくって、彼女が好きだという冬の海は、ひどく寂しく思えた。
A「カズ？」
「ん？」
A「座ろっか」
「ああ」
流木をイス代わりにして、しばらく海を見つめていた。
空はさっきよりも鉛色に近づき、日光を浴びない海も空と同じ色に染まってる。
ふとAを見ると、遠い彼方を眺めていた。
最後の言葉ーside kazuー→←防波堤ーside kazuー
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 233人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シロ(プロフ) - 柄璃華さん» もう、嬉しいお言葉、何度も何度もコメント読ませていただきました。そのたんびに、力が湧いてくるんです。頑張ろう！って。ほんとにありがとうございました。 (2014年8月27日 18時) (
レス) id: 03309d756a (このIDを非表示/違反報告)
柄璃華(プロフ) - 素敵なお話でした。書いてくれてありがとうごさいました。シロさんが書くお話大好きです。応援してます。頑張って下さいね！ (2014年8月24日 23時) (レス) id: 86b64db34b (このIDを非表示/違反報告)
シロ(プロフ) - かこさん» コメント、ありがとうございますっ！そしてそしてなんとも嬉しいお言葉。涙が出そうです。かこさんに言われるのはすごくすごーく照れますね（苦笑）あ、またお暇なときにでも遊びに来てくださいね♪ありがとうございました。 (2014年8月7日 15時) (レス) id: 03309d756a (このIDを非表示/違反報告)
かこ(プロフ) - 早速おじゃましましたー♪やー、一気読み。切なさとあふれる二人の想いに引き込ま夢中で読みました。ハッピーエンドでよかった！すてきな作品に出合い今日は大満足です。またおじゃまします(///∇///) (2014年7月31日 17時) (レス) id: ae2a9fb09b (このIDを非表示/違反報告)
シロ(プロフ) - Rumikoさん» お返事遅くなってごめんなさいっ！そしてコメントありがとうございます！お言葉本当に嬉しくて、こちらに発表してよかったって心から思いました。ラブストーリーは突然に♪コメントを読みながら、ほんとだ！ってなりました（笑）また恋して頂けるように、頑張りますねっ (2014年6月30日 17時) (レス) id: 03309d756a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：シロ | 作成日時：2014年5月14日 16時
