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思っていたよりも、今日は仕事が早く終わった。
一度家に戻ってから、せっかくなら新しく駅前にできたカフェへでも行こう。
そう思い立って気分良く出て来たはいいものの、しばらくするとぽつり、ぽつりと雨が降ってきた。
仕方なく近くの駅で雨宿りしていたが、雨は止むどころか酷くなる一方で。
はあ、と一つため息をつき、傘を買おうと財布を取り出した。
はずだった。
自分の手に収まっていたのは、薄っぺらいカードが一枚入っている、ただのパスケース。
まさか、財布と間違えるなんて。
思いもよらない自分の失敗に、もう一度ため息をつく。
ああ、雨よ。せめて三十分だけでも止んでくれ。
もうちゃんと、大人しく家に帰るから。
なんて思いながら空を見上げていたところ、俺に声をかけられたらしい。
「それはまあ、なんていうか、……可哀想だな」
相変わらず空を見上げながら、これまでの経緯をゆっくりと話す京本。
俺は何故だか、その話を隣で聞く羽目になっていた。
…いや、もちろん声をかけたのは自分だ。責任があることはわかっている。
けれど、もしこの光景を樹やアイツらが見たら、ましてやファンが見たら、どう思うだろう。
最近の俺たちからは想像もつかないであろうこの状況に、なんだかむず痒いような感覚がした。
それでもやはり、耳を傾ける。
チラリと横を見れば、綺麗な横顔が、雫が滴る重たい前髪が、冷えて余計に色をなくした肌がそこにはあって。
思わず目を逸らした。
「雨、いつになったら止むかな」
「…いや、今日はこれから更に酷くなるって予報では言ってた」
「うえっ、まじかよ」
あからさまに嫌そうな顔をする、その素直で子どもっぽい表情が。
どうしよ、と困ったように口を尖らせる仕草が。
心を騒つかせる。
しとしとと、雨の音が強くなる。
「これからどうするつもり？」
「え、ごめん、なに？聞こえない」
「…だから、これから、」
「え？雨うるさ…なに、？」
きっと、あまりにも、雨が会話の邪魔をするから。
「雨止まないけど、どうす」
「ん？」
ガヤガヤと騒めく駅の雑音と、激しさを増す雨の音が二人を遮るから。
だから。
きっと、そう。
だから。
「………うち、来る？」
魔が差したのかもしれない。
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白梅(プロフ) - なぺこさん» なぺこさんコメントありがとうございます！嬉しい言葉がたくさん、、！不定期更新ですが、ぜひこれからも応援よろしくお願いします！ (2019年6月3日 16時) (
レス) id: ff41a5aa52 (このIDを非表示/違反報告)
なぺこ(プロフ) - とても面白いです！文章から、その時の情景がすごく伝わってきて読みやすいです！！好きです！応援してます！！ (2019年6月2日 22時) (レス) id: 7d886639bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白梅 | 作成日時：2019年5月15日 18時
