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▽side.t
思っていたよりも、俺は熱に浮かされていたのかもしれない。
昼休憩。外から戻ってきた樹が、ガサッと徐ろにビニール袋を渡してきた。
一体なんだ、と首を傾げながら中を覗けば、そこには一本の水といくつかの薬。
粉薬をチョイスしてくるところが、さすがというかなんというか。
「きょも、無理しないでね」
眉を下げて俺を見つめる樹。
ああ俺は、彼の優しさに幾度助けてもらっただろう。
相変わらずいい奴だな。なんて思ってても口には出さないけど、嬉しさで思わず顔が綻んだ。
その甲斐あってか、午後の撮影もなんとか無事に終え、ぞろぞろと皆が帰って行く。
俺も帰らなきゃなあ、また樹にどやされるなあ、なんて考えていたのに。
いつにも増してソファが魅力的に見えて、気がついたら横になっていた。
知らぬ間に眠りの中に入ってしばらく。
少しだけ強めな震動に反応して目を開いたら、目の前には北斗の顔。
その端正な顔立ちをぼんやり眺めて、ああ、朝かと寝惚けたことを考えた。
そこまではいい。
なんら問題はない。
だけど、
そのまま帰り支度を始める北斗の背中が、妙に小さく見えて。
あ、寂しい。
なんて、ほんの少しだけ、思ってしまった。
普段の俺なら、普段の俺たちなら、そんなこと絶対にあるはずないのに。
来るもの拒まず、去る者追わず。
それが俺のスタンスで、それを崩すことなんて今まで殆どなくて。
だからこれも、きっと、珍しく昨日北斗が俺に歩み寄ってきたからで。
それに俺は応えただけで。
だから、コイツの家に行くことは、なんら問題はないわけで。
なのに、なのに。
チラリと左横を盗み見る。
相変わらずクールで、真っ黒な睫毛を伏せながら歩く北斗。
そこから感情なんて読み取れないけれど。
左側に北斗がいて、今、二人で彼の家に向かっている。
その非現実的な感覚に、ほのかに嬉しさを覚える俺は、一体何なんだろう。
これはきっと、問題だ。
熱に浮かされた俺の、迷宮入りの問題だ。
そういうことにしておこう。
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白梅(プロフ) - なぺこさん» なぺこさんコメントありがとうございます！嬉しい言葉がたくさん、、！不定期更新ですが、ぜひこれからも応援よろしくお願いします！ (2019年6月3日 16時) (
レス) id: ff41a5aa52 (このIDを非表示/違反報告)
なぺこ(プロフ) - とても面白いです！文章から、その時の情景がすごく伝わってきて読みやすいです！！好きです！応援してます！！ (2019年6月2日 22時) (レス) id: 7d886639bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白梅 | 作成日時：2019年5月15日 18時
