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第92話 質問と甘い要求 ページ45

「そういや、Aが勤めてる商社は、どんな処なンだ?」
「人間の手には()えない案件を扱ってるって聞いた」

 引っ越し後に過ごす最初の土曜日。
 朝食の後片付けを一緒にしている最中に、中也から質問を受けた。

「従業員は、人間じゃねェのか?」
「人でないモノも、人間も居るよ。業務上、人外が()える者だけ採用されてるし、イギリスで会った女性のオリヴィアさんは、人間の子供と取り替えられた妖精だ」
「はァッ!? あの人の耳は人間だったぞ」
「ああ。それは、中也を驚かせないように特殊な薬を塗って、(とが)った耳を隠してンの。あたしも初対面の時にそうされたし、鞄に入れた軟膏(なんこう)は、妖精のが視える塗り薬で、水で洗い流せば視えなくなるよう調合してもらったけど、ああいう存在は見聞きできないほうが一番善い」
「なんでだ?」
「全ての妖精が優しいわけじゃないからだよ。悪戯(いたずら)する個体も居るし、人に害を及ぼして、危険や死をもたらす個体も居る。滞在中は、(まぶた)に塗ってくれるように手紙に記しておいたけど、多用すれば現実との境が判らなくなるから、あまり使わないでほしいな」
「わかった」

 皿を片付け終わった後、干している洗濯物を取り込むために、(ほう)ける婚約者の手を引いて、取り込むための(かご)を手に取って台所から居間を通り、ベランダへ連れて行った。そして、彼から衣類を受け取りながら、感謝を言葉にしていく。

「人間の常識が通じない世界で働くのは初めてだけど、オリヴィアさんと中也のおかげで、無事に日本に帰国できたし、本当に感謝してるよ」
「A」
「ん?」

 受け取った衣服を(たた)んでいる最中に呼ばれ、彼を見上げた拍子に、クイーンサイズのシーツを頭上で広げられ、2人してそれを被ってしまう。

「…何? 中也」
「普段だったら『言葉だけで善い』って返すけどよ。今日は、行動で示してくれや」
「え?」

 中也は、自分の唇に人差し指を当て、あたしの顎を指で優しく持ち上げて、笑いながらキスを要求してきた。(まぶた)を閉じて待機する彼に、勇気を振り絞って顔を近づけ、どうにか唇に触れるだけの接吻したが、婚約者の顔を直視できずに、恥ずかしさから肩に顔を(うず)めてしまう。

「…これで良い?」
「今はな。少しずつ慣れるしかねェし、結婚式までは毎日、唇に接吻(キス)するぞ」
「ヒェ…」

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , イケメン女子   
作品ジャンル:恋愛
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エミリア1415(プロフ) - 薫染-ゆきせ-さん» 薫染ゆきせさん、コメントと応援。ご指摘ありがとうございます。意味を間違えて使っていました。教えて頂き、ありがとうございます。すぐに修正しますね。更新も頑張ります。 (2019年8月25日 21時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
薫染-ゆきせ-(プロフ) - 此れからも更新頑張って下さい!2枠続けてのコメント失礼しました。あと 言葉運びが意図的なものだったらすみません! (2019年8月25日 20時) (レス) id: e1459da1b7 (このIDを非表示/違反報告)
薫染-ゆきせ-(プロフ) - 何時も楽しく読ませて貰ってます!89話の中の台詞についてなんですけど…内容的に「満身創痍」ではなく「五体満足」の方があっていると思いますよ。あの台詞だと「全身傷だらけで良かった。」みたいな意味になってしまうので…可也 上から目線ですね。すみません (2019年8月25日 20時) (レス) id: e1459da1b7 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - 銀桜さん、コメントありがとうございます。少しでも話を進められるように、更新頑張りますね。 (2019年8月22日 17時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
銀桜(プロフ) - あぁ、夢主ちゃんと大我くんが元に戻って良かったです。更新頑張ってください! (2019年8月22日 17時) (レス) id: 1194b2a018 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エミリア | 作成日時:2019年6月30日 13時

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