重力使い、絶賛悶絶中。 《中原中也》

第62話　公開処刑 ページ15

「なぜ知っている!?」
「４日前の夕方。爺や経由で、41代目当主であるお父様に密告があった時点で、叔父様(おまえ)の処分は決定し、どうやって白状させるか、娘に電話口で連絡が来た。あたしは、『当主に任せる』と告げたが、彼に尋問の知識も術(すべ)も無い。そこで、良い機会があるのだから、我が家に隠してきた過去と、個人の特殊な趣味を全部暴露したまでだが、まだ異論があるなら、思う存分言ってくれても構わないぞ？」

　婚約者のAは、すっきりした面(おも)持ちでいるが、青灰色(せいかいしょく)の瞳は、尋問を始めた時から一切笑っていなかった。２枚のディスクを手元に置き、男の眼前に人差し指を立てる。

「最後に、もう１つだけ答えろ。残りのディスクには、あたしが映っているが、動画(これ)を脅迫の材料にして、惚れ薬を飲んだ状態の中也に、破廉恥な真似をする魂胆だったんだろう？」

　全てを暴露され、最早(もはや)、全てを認めるしかない男の目を見ずに、俺は、必死に目を開けて睡魔と戦う千葉側の年配の当主の許可を得て、手ぶらで男の体を宙に浮かせた状態で広い裏庭へ連れ出す。そこで、数歩後に控えるAと視線を交わせば、これからの行動の意味を汲(く)んだ上で、中身が見えないよう配慮した黒い結界を張ってくれた。

「これまでは、人間が下した処分だ。異能達は、どんな判断をするンだろうな？」

　女性の異能達の含み笑いに押される形で、２人の男性が前に進み出る。Aに一番多く加護を授けている赤髪灰眼の鳳(ほう)様と、命運を自在に操る褐色の髪と翠眼の不死鳥様だ。

《我は、お前に関わる全ての縁を切る》
《ボクからは、決定事項を伝える。君の命の糸は結び直さない。来世にも決して繋げないよ》

　フェニックスの罰に、鳳様は軽快に口笛を拭いた。それを聞いて、俺は、彼らと同様に肩を揺らし、嗤(わら)って喉を鳴らす事もなく、普段の仕事通りに、冷淡で事務的な口調で相手の顔を見下ろして死の宣告をする。

「これから良好に築ける筈(はず)だった関係を、手前(テメェ)の独りよがりな考えと欲で、勝手にブチ壊したんだ。ポートマフィアに敵対した事の重大さを、その身を以(も)って知れ」
「嫌だ！」
「黙れ」

　断末魔の一つもなく、Aの叔父だった者は、温度の無い結界の中で抗(あらが)えない重力で押し潰され、破壊音と共に呆気(あっけ)なく死んだ。

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