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第59話 介抱 ページ12

《我らが居なければ、理性を飛ばして、婚前交渉に至っていたぞ?》

 あたしに背を向けて座す赤髪灰眼の(ほう)様が、ニヤけた笑いを浮かべながら、意識を飛ばしていた間の状況説明をしていく。しかし、この部屋に今まで()いだ事のない独特の匂いが充満しており、『これは、あんな事をした後に残る匂いなのか』と思い、気恥ずかしさを覚えた。

《それで、疑似体験は如何(どう)じゃった?》
「…聞かないで下さいよ。破廉恥! っ。げほっ!」
《じゃが、そのおかげで、処女は守られておろう》
「……」

 完全にしゃがれた声で反論する間も、彼ら直々に、睡眠薬の影響で気怠(けだる)い体を動かせない自分達を(いた)わって、当人の代わりに彼らの手助けで、蒸しタオルで清めて下さっている。そこで、ある事に気付き、中也が青ざめた表情で鳳様に質問をした。

「あの、音は漏れてないンですよね…?」
《問題ない。完全防音の結界を張っとるから、外には一切聞こえてはおらん》

 得意顔で気遣いを示した赤髪の彼の返答に、二つの安堵の溜め息が漏れる。

《…却説(さて)、いくら目を覚ましたとはいえ、未だ(だる)かろう。完全に薬が抜けきるまで、もう少し寝ておれ》
『ありがとうございます…』

 消え入りそうな声で礼を告げた後、枕元に着流しが用意され、自分達を隔たるように黒一色の屏風(びょうぶ)が、無音で出現した。


 完全に薬が抜けた頃には、もうとっぷりと日が暮れており、腕時計で時間を確認すれば22時を回っていた。客間で着流しに着替えて、真っ暗な廊下を二人で突き進み、くぐもった声のする大広間へ向かった。

「血族が途絶えたら、お前のせいだぞ! 誠治!」
「大声をあげないで下さいよ」

 怒号と共に、温厚な父が実弟を叱責(しっせき)するのを耳にして、顔を見合わせて廊下に座し、彼らに一声かけた。

「お父様。入ってもよろしいでしょうか?」

 すると、ぴたりと声が()み、入室許可を得た。襖を少し開けてから、気持ち大きめに手元に向けて引き、頭を下げた状態で断りを入れて立ち上がり、足を踏み入れる。そして、父が最初に謝罪した。

「2人共、大変申し訳ない。41代目現当主としてどんな責任でも負いますし、愚弟の処分も決まった」
「賢明な判断だな。そうしなきゃ、今頃この部屋は血の海だ。さァ、男の身柄を寄越せ」

 底冷えする声で、中也が埼玉側当主のお父様に要求した。

第60話 叔父の過去→←第58話 まどろむ意識



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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , イケメン女子   
作品ジャンル:恋愛
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エミリア1415(プロフ) - 薫染-ゆきせ-さん» 薫染ゆきせさん、コメントと応援。ご指摘ありがとうございます。意味を間違えて使っていました。教えて頂き、ありがとうございます。すぐに修正しますね。更新も頑張ります。 (2019年8月25日 21時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
薫染-ゆきせ-(プロフ) - 此れからも更新頑張って下さい!2枠続けてのコメント失礼しました。あと 言葉運びが意図的なものだったらすみません! (2019年8月25日 20時) (レス) id: e1459da1b7 (このIDを非表示/違反報告)
薫染-ゆきせ-(プロフ) - 何時も楽しく読ませて貰ってます!89話の中の台詞についてなんですけど…内容的に「満身創痍」ではなく「五体満足」の方があっていると思いますよ。あの台詞だと「全身傷だらけで良かった。」みたいな意味になってしまうので…可也 上から目線ですね。すみません (2019年8月25日 20時) (レス) id: e1459da1b7 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - 銀桜さん、コメントありがとうございます。少しでも話を進められるように、更新頑張りますね。 (2019年8月22日 17時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
銀桜(プロフ) - あぁ、夢主ちゃんと大我くんが元に戻って良かったです。更新頑張ってください! (2019年8月22日 17時) (レス) id: 1194b2a018 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エミリア | 作成日時:2019年6月30日 13時

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