第4話 限界 ページ6
「……はぁ」
「どうした。深いため息なんぞつきおって。育児疲れか?」
心配そうに孫であるあたしの顔をのぞき込むのは、祖父の和樹だ。
「単なる予知夢だ。爺様には関係ない」
「なんじゃと!? 孫の心配をしておるのに、その言い草は!」
「関係ないから言ってるんでしょ! 朝から叱るのはやめて!」
「叱るわ! だいたい、何処ぞの馬の骨か判らん子を産みおってからに。これでは、神事を行う立場の榊一族の名が穢れるわい!」
「その立場を危うくしたのは、爺様本人のくせに」
「二人とも朝飯前にやめんか!」
広いダイニングキッチンで、父の声が響く。
これで、ソファーで二度寝しようとしたナルトが起き、抱っこしていた良平が泣き出した。
「俺も、父さんの意見に賛成する。だいたい、未成年者が結婚など許さん」
「それは、2年前の話で、法では結婚できる年齢でしょ。それに、お父さんの遺言通りに、入籍後に事に及びました」
「では、相手の苗字。年齢。どんな仕事に就き、役職は? 言ってみろ」
「……」
あたし達が住んでいる世界の時間で、2年前に彼に言った言葉を思い出す。
(たとえ、身内に批判されようとも、芥川の姓を名乗り、喜んで貴方の妻になります)
一呼吸して、彼らの顔をしっかり見る。
「夫は、芥川龍之介。職は、ポートマフィア。黒蜥蜴率いる遊撃隊隊長です」
『なっ……!』
曾爺様を含むお三方は顎が外れるんじゃないかと思う程、口をあんぐり開け、ナルトは、あたしの言葉を聞いて、顔面蒼白になった。
「A姉ちゃん。それは、絶対言わない約束じゃ…」
「彼と恋仲になった時点で、絶縁になる事は百も承知だ」
「その心意気、しかと認めた。だが、貴様は榊一族の恥だ。やはり、言い伝えは誠だった。朱髪のお前を育てず殺せば良かった。即刻、家から出て行け! 疫病神!」
「出て行きますとも!」
「え? ほ、本当に…行くの?」
視線だけで、少年を黙らせる。既に私服に着替えていた為、それぞれの鞄や巻物に荷物を詰めこみ、または収納し、父達が住む家を後にした。
「…A姉ちゃん。これから、どうするんだってばよ?」
「とりあえず、飯だな」
徒歩で来たローソンで、店員はさぞ驚いただろう。朝食だけでなく、昼食の分まで、計16品を購入したのだから。
チャーシュー煮卵おにぎりを一口食べて、違和感を覚える。
全く味がしない。
身も心も限界だと体が訴えているのかな、などと他人事のように思っていた。
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エミリア1415(プロフ) - にゃんこさん。コメントありがとうございます。魅力的に書けるように頑張ります。 (2021年1月15日 15時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - 芥川大好き。龍チャン愛してる。 (2021年1月15日 13時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - 白狐さん» 白狐さん、コメントありがとうございます。更新できるように精進しますね (2018年12月16日 17時) (レス) id: c808353d76 (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あー、最高。全てが好き。更新頑張ってください。僕の為にも((( (2018年12月13日 23時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - ありがとうございます。頑張りますね。 (2017年4月9日 15時) (レス) id: 738ed6759e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エミリア | 作成日時:2017年3月12日 22時