第12話 逢瀬 ページ14
「こんばんは。龍」
「その呼び方は止めろ。僕達の関係が表沙汰になる」
「嗚呼、そうだった。ごめんなさい」
一児の母となったAは、2年前と変わらず凛とした雰囲気を醸し出している。
「行くぞ」
黄昏時に街を歩いて行く中、Aは、此方の世界で生を受けた祖父達に縁を切られた事や、親友と再会出来た事を話した。
「昨日、ギルド戦が収束したばかりでしょう。体調は大丈夫?」
「全身筋肉痛だが、苦ではない。此の機を逃せば、停戦協定という名目で、僕達が私用で会う事は許されぬ」
「…判った。今日は、貴方の我が儘に付き合おう」
「元々、Aの考案だろう。約束は守る」
地下に位置する喫茶店『雫』の扉を開くと、店主の顔が硬直する。何事かと思ったが、特に気にせず、席に腰を据え、Aに品書きを手渡した。
「僕は、何時もので」
「あたしは、カフェオレでお願いします」
「はい。少々お待ち下さい」
こぽこぽと音を立ててつつ、店主が作る珈琲を待っている間、彼女が口を開く。
「今夜、良平に会いに来る?」
「否。旅行の時で良い」
一度頷いただけで、其れ以上、息子の事を口にする事は無かった。退店後、『あの店は曾祖父達が経営している喫茶店で、店主は祖父だ』と告げられた時は、驚きはしたが、彼の反応から納得出来る。
横浜駅から赤レンガ倉庫に位置する駅で下車し、其処で地酒を二本購入し、再会を祝した。
「上機嫌だね。何か良い事あった?」
「…昨夜、太宰さんに認めて貰えた」
「そうか…。良かったね。やっと…っ」
嬉し涙を流すAの背中をさすりながら、飲み干し、土産と軽食に付き合う。
近隣に設置されている遊園地では、先日、人虎と小娘が大観覧車に乗っていた。思い出すだけでも忌々しいが、恋人らしき3組の後ろで、俗に言う恋人繋ぎをして大人しく待つ。
「先月、探偵社に挨拶に言った時、太宰さんに言い寄られたよ」
何故か、胸の奥を刃で鋭く刺されたような痛みが走った。
「勿論、丁重にお断りした。あたしは、龍しか眼中に無いから」
「僕もAしか見ておらぬ」
其れに乗り、頂上に着いた時、妻が口を開いた。
「…夜景が綺麗だね」
「嗚呼」
眼下に広がる景色を、静かに二人で眺めていく。
「A。21時を回ったが、家に帰らなくて良いのか?」
「同僚にに世話を任せているから、まだ大丈夫だ」
「ならば、僕の家に来い」
この言葉の真味が判らぬ程、僕達は
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エミリア1415(プロフ) - にゃんこさん。コメントありがとうございます。魅力的に書けるように頑張ります。 (2021年1月15日 15時) (レス) id: 82aefb6635 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - 芥川大好き。龍チャン愛してる。 (2021年1月15日 13時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - 白狐さん» 白狐さん、コメントありがとうございます。更新できるように精進しますね (2018年12月16日 17時) (レス) id: c808353d76 (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あー、最高。全てが好き。更新頑張ってください。僕の為にも((( (2018年12月13日 23時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
エミリア1415(プロフ) - ありがとうございます。頑張りますね。 (2017年4月9日 15時) (レス) id: 738ed6759e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エミリア | 作成日時:2017年3月12日 22時