ツンデレ王子と白鷲のお姫サマ[白布賢二郎]

39*紡がれる指先への称賛 ページ40

｢あんなに牛若に尽くしてるのに、牛若は俺に白鳥沢に来るべきだってよく言うよね。
どう？代わりにされてる気持ちは。
しかもAも俺のお下がりでしょ。｣


｢ちょっと！いい加減怒りますよ!!｣

｢A。落ち着け。｣


徹先輩の煽りに腹が立ったのは私で、
腹の底から声を出すように低く言い聞かせる賢二郎にビビったのも私。

基本は温厚な人だが敵視した人間を煽る事がある。


｢言いたい事はそれだけ？
牛島さんに求められようと今のセッターは俺なんで。一度でも勝ってから言えよ。
Aの事も、今更付け回すのは自分のだった物が他人に取られて悔しいからだろ。
…白鳥沢の俺に取られた気分はどうすか？｣

｢…生意気なクソガキ…！｣


｢あ、白布！こんな所に居たのかよ。
バス出るから早く行くぞ。｣


少し先で瀬見さんが声を掛けてくる。

それに対しての舌打ちし、賢二郎は私の手を引いて声する方に進む。
背にはヒリヒリと視線を感じるけど、怖過ぎて振り返る気にはなれない。


｢賢二郎、ごめん…｣

｢なんでお前が謝んの？｣

｢…｣

｢別に悪い事して無いだろ。｣

｢…来てくれて嬉しかった。｣

｢ん。
俺はバスで学校戻るからお前は雪村…どこいった？雪村とちゃんと帰れよ？｣


頭撫でられてる…!!
不意打ちだし、人の往来もあるのに…
見上げた顔はそんな事どうでも良さそうで、心配…してくれているのかな。

名残惜しそうに離れた手と、伏せた目がこちらを見ている。
きっちりとテーピングが巻かれた指先に目が行き、それに触れた。


この指がキレイなトスを上げていた事、ちゃんと見ていた


指先に一瞬触れるキスをしたのは無意識にも近かったの。


｢バレーしてる賢二郎楽しそうで格好良かった。
明日も応援に来るから頑張ってね。｣

｢…うん。
雪村も来たな。じゃぁ行くから。｣


背を向けた賢二郎は駆け足で去っていくし、入れ違いに側に来た藍ちゃんはどこか嬉しそう。


私達も市営のバスに乗り白鳥沢に帰る事に。
なんかどっと疲れた。

別れたから関わりたくない。関わるとしてもただの先輩後輩レベルの関わりだけで良い。
賢二郎の事も煽るし…ほんと性格悪い…。




｢やっぱり関わりにはなりたくないかも。｣

｢あ、私さ及川徹と連絡先交換したの♡｣

｢…ほんとに？｣

｢うん。Aと白布が居なくなってから声かけられて。｣

｢まじかぁ…頑張ってね？｣


藍ちゃんに余計な事を吹き込んだりしなければいいけど…何考えてんだろう…

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