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そして俺は、そういう人に出会ったのだ。
「…………この子、この子の名前が知りたい」
目の前の友人は顔を顰めて、「その子はやめておけ」といった。どうしてなのかは分からない。でも俺は確信している。この子が『探していた誰か』なのだとはっきりわかる。
色白で華奢そうな体、黒い髪は写真でもわかるくらい艶やかで、ピントが合っていないのか少しボヤけた表情は僅かに微笑みを湛えているような気がする。一言で言えば大人しそうな子。別にどこにでもいるような雰囲気の女の子。それでも俺の確信は告げている。この子だ、と。
執拗に執拗に何度も友人を問い質した。この子は誰だ、この子の名前は、この子はどこに住んでいるのだ、趣味は、誕生日は、血液型は？
そうして得られた答えはあまりにも残酷で酷く辛いものだったけれど。
「……その子、一年前に死んでるんだよ」
「は？」
「嘘じゃない。本当だ」
そう言われて、もう一度彼女が写りこんだ写真を見下ろした。何も変わらずに微笑みを湛えている彼女が、こちらを向いている。彼女は鮮やかに写真の中で生きている。そんな馬鹿な、嘘だ、在り来りな否定の言葉は沢山浮かぶけれど目の前の友人の顔は酷く真剣だ。
「……本当に？」
「こんなことで嘘なんかつかねえよ」
歪めていた顔を更に歪めて、床に散らばった写真を友人は拾い集めた。その中から幾つか抜き出した写真を「これ」と言って差し出してくる。わけも分からないまま受け取れば、そこには色々な場面で切り取られた彼女の姿があった。そのどれもが微笑んでいて、彼女は生きていた。
「死んでるんだよ。赤葦が言ったその子は、死んでるんだ」
だからやめた方がいい。その子を好きになったって報われるはずがない。他の子なら紹介できる。だからその子は、永井さんだけはやめておけ。
優しい友人はそう言って「どんな子が好きなんだ？」と他の写真を広げ始めたけれど、俺の心はずっとずっとこの写真の中で生きている彼女に囚われたままだった。
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つばき - 川西のお話、鳥肌が立ちました。陰のある恋をしてほしいっていうの、同意します…！ (2021年2月14日 10時) (
レス) id: f1e42d3762 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - リムさん» ありがとうございます！ 頑張ります (2019年12月30日 22時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
リム - 赤葦の物語とっても切なくて涙が止まりません・・・泣 これからも頑張ってください! (2019年12月22日 2時) (レス) id: 7cc2098249 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 天祢さん» そう言っていただけてうれしいです！個人的にも川西くんのお話が好きなので、刺さってくださる方がいて良かったなあと思います。更新を楽しみにして頂けるとうれしいです。コメントありがとうございました！ (2019年12月14日 15時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
天祢 - 読ませていただきました!勿論全部のお話が素晴らしかったのですが、元々最推しなのもあって川西くんのお話が特に良かったです。深いなぁ…と思いました。更新頑張って下さい!楽しみにしています(^-^) (2019年12月13日 21時) (レス) id: dfbff6b887 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桔梗 | 作成日時：2019年11月16日 13時
