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 それから何回も何回も侑は私の心にナイフを突き立てたし、私は何度も侑に傷を作った。

鎖骨、首筋、耳。

バレーに支障のある場所には決して傷を作らない私に、侑は「Aのそういうとこが好き」と言って笑うから、私は泣きながら「もう傷つけさせないで」と縋るしかなかった。

 私がつけた傷跡が薄らと残る侑の体に、満足しなかったかと聞かれればそれは嘘になる。

私が傷を作るようになってから、侑が他の女の人と身体を重ねることは少なくなった。

それでも決して無くなることはなくて、その度に私は侑に別れを切り出すのに、侑は私を離してはくれなかった。


「A、ごめん」

「もう、やだ。もう本当に、侑のことで傷つきたくない。もうやだ、もうやだ……もうやめてよ、どうして私だけじゃいけないの」

「俺にはAだけやって言うてるやん。俺が好きなんはAだけやって」

「好きなのにどうして私以外の女の子と一緒にいるの」

「ごめん」


 侑はそう言ってまた泣きそうな顔をするから、私は結局侑を許してしまう。

 いつものようにぐいと襟ぐりを引っ張って剥き出しにされた侑の首筋に、私は思い切り噛み付いた。

この奇妙な提案を侑がしてきた時には確かに抱いていた躊躇はもう失くしてしまった。

口の中に僅かに残る鉄の味に私はまたどうしようもなく傷ついた。

 幾度となく繰り返されるこの行為は確かに侑を縛ったけれど、傷口から膿んで私を蝕む病を癒すことは決してない。


「ごめんなA」


 泣き続ける私の頭をゆるりと撫でて、侑はぐいと私を抱き寄せた。

私の頬を伝って流れ落ちる涙を侑は器用に掬って、抱き寄せたまま私の顎を捕まえる。

 無理やり侑を見上げる形になった私の涙に濡れた視界では侑の顔は歪んでしか見えなくて、何度も瞬きをするのに涙は溢れて止まらない。

 躊躇いがちに口付けられる。一度目は受け入れて、二度目のキスは私からした。

三度目のキスが降ってきた時、私は思い切り侑の唇に歯を立ててやった。

先程も感じた鉄の匂いが鼻について、またどうしようもなく傷ついた。

 血の滲んだ唇を拭って、侑は情けない顔で笑う。


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設定タグ:ハイキュー , 短編集 , 桔梗   
作品ジャンル:恋愛
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つばき - 川西のお話、鳥肌が立ちました。陰のある恋をしてほしいっていうの、同意します…! (2021年2月14日 10時) (レス) id: f1e42d3762 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - リムさん» ありがとうございます! 頑張ります (2019年12月30日 22時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
リム - 赤葦の物語とっても切なくて涙が止まりません・・・泣  これからも頑張ってください! (2019年12月22日 2時) (レス) id: 7cc2098249 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 天祢さん» そう言っていただけてうれしいです!個人的にも川西くんのお話が好きなので、刺さってくださる方がいて良かったなあと思います。更新を楽しみにして頂けるとうれしいです。コメントありがとうございました! (2019年12月14日 15時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
天祢 - 読ませていただきました!勿論全部のお話が素晴らしかったのですが、元々最推しなのもあって川西くんのお話が特に良かったです。深いなぁ…と思いました。更新頑張って下さい!楽しみにしています(^-^) (2019年12月13日 21時) (レス) id: dfbff6b887 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桔梗 | 作成日時:2019年11月16日 13時

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