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「俺がAを傷つける度に、Aも俺を傷つけて」
「……なに？ 私も他の男の子と浮気すればいいの？」
「それはあかん、そういうことやなくて、」
彼は私を縛るくせに、私は彼を縛れなかった。
それがどうしようもなく虚しくて、辛くて、苦しい。
彼は首元のボタンを外して、着ていたシャツの襟ぐりをぐいと引っ張った。
男らしく筋張った首周りが晒されて、私はただただ困惑に首を傾げるしかない。
一体どうしろというのか。
私と目が合うと、彼はただ困ったような顔で「傷つけて」と笑った。
「傷つけて、傷つけて、そうして俺を縛ってや」
「意味わかんないよ」
「俺はAのもんやから、Aが俺を傷つけて」
侑がそう言って私の後頭部を引き寄せる。
目の前には彼の剥き出しにされた首と鎖骨があって、思わず距離を取るように手をついた。
「噛んでええよ」
「なんで」
「ええから、血ぃ滲むくらい噛んで」
「無理だよ」
口ではそう抵抗しつつも、私の心にはどんなに縛ってもするりと抜けてしまう彼に、こんなに綺麗な人に傷をつける権利を得たという仄暗い喜びが生まれていた。
侑にはそんなことお見通しだったのかもしれない。侑はほら、と私を急かす。
躊躇いがちに鎖骨に噛み付けば、そこには薄らと歯型がついた。
言いようもない背徳感がぞくぞくと背中を伝っていく。
侑は尚も私の後頭部を押さえつけて「足りん、もっと」と言うので今度は遠慮なく噛み付いてやった。
「っ、」
「いたい？」
「痛い」
「もっと？」
「おん」
歯を立てるように、今度はもっと明確に傷をつける意志を持って噛み付いた。
赤く滲んだ傷跡を確かめるように触った侑は顔を歪める。
「こうやって、俺がAを傷つけたら、Aも俺を傷つけて」
「……うん」
私は血の滲んだ侑の鎖骨に口付けて「もう浮気しないでよ」と囁いた。
侑はそれに笑うだけで「もうしない」とは言わなかった。
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つばき - 川西のお話、鳥肌が立ちました。陰のある恋をしてほしいっていうの、同意します…！ (2021年2月14日 10時) (
レス) id: f1e42d3762 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - リムさん» ありがとうございます！ 頑張ります (2019年12月30日 22時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
リム - 赤葦の物語とっても切なくて涙が止まりません・・・泣 これからも頑張ってください! (2019年12月22日 2時) (レス) id: 7cc2098249 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 天祢さん» そう言っていただけてうれしいです！個人的にも川西くんのお話が好きなので、刺さってくださる方がいて良かったなあと思います。更新を楽しみにして頂けるとうれしいです。コメントありがとうございました！ (2019年12月14日 15時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
天祢 - 読ませていただきました!勿論全部のお話が素晴らしかったのですが、元々最推しなのもあって川西くんのお話が特に良かったです。深いなぁ…と思いました。更新頑張って下さい!楽しみにしています(^-^) (2019年12月13日 21時) (レス) id: dfbff6b887 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桔梗 | 作成日時：2019年11月16日 13時
