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国見くんがこちらを見ていないのをいいことに、私は国見くんの背中に声を投げる。
自分の席の近くにしゃがんでいて、机の中を覗き込んでいる国見くんは私の方を振り返りはしなかった。
とっくに日が沈んで、鏡と化した窓は私と国見くんを映し出す。
「…………昼間はごめんね」
「……なにが？」
「…………ひどい言い方、したから」
国見くんは振り返ってぎょっとした顔をした。
結局国見くんは振り返ってしまって、酷い顔を見せてしまうことになる。
酷い顔をしている自覚はあるけれど、それにしたってそんなに私の泣き顔は酷いか。
もう最悪だ。
よりにもよって、国見くんにこんな、今世紀一番不細工な私を見られているだなんて。
「…………俺、聞いていいの？」
「なにが」
「あー……なんで泣いてるのか、とか」
首を傾げる国見くんに、私は小さく頭を振った。
今、私は確かに泣いているけれど、それは私が悪いから泣いているのだ。
第一、国見くんにそれを言って、『国見くんが可哀想だ』といったあの子たちをどう思うかだなんて考えたくない。
国見くんが、それはそれは大きな溜息をついたので、私は思わず肩が跳ねさせた。
大きな足のつま先がこちらに近づいたのが見える。
気がつけば、彼は私の席の横に立っていて、眉を顰めて、あまり好意的にはとれない表情をしていた。
なにか、気に触ることをしただろうか。
いや、嫌な女の代表みたいな私がここにいて、めそめそと泣いている様を見たくもないのに見せられ、それにも関わらず泣いている理由を話さないって……もう充分苛立たせることはしているかもしれない。
一度は引っ込みかけた涙が、みるみるまた込み上がってきた。
それを見て、国見くんがまたぎょっとする。
もう、本当に、すぐに泣いちゃってバカみたい、私。
「え、……待って、なんでまた泣くの？ 俺、なんかした？」
「違うの……いや、違くないけど……」
「え、やっぱり俺がなんかしたの？」
国見くんは益々困ったような顔をした。
いつもはあんまり見ない表情だ。
なんだか新鮮で、でもその表情は私が面倒にみっともなく泣いているからだ。
それがなんとも切ない。
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つばき - 川西のお話、鳥肌が立ちました。陰のある恋をしてほしいっていうの、同意します…！ (2021年2月14日 10時) (
レス) id: f1e42d3762 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - リムさん» ありがとうございます！ 頑張ります (2019年12月30日 22時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
リム - 赤葦の物語とっても切なくて涙が止まりません・・・泣 これからも頑張ってください! (2019年12月22日 2時) (レス) id: 7cc2098249 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 天祢さん» そう言っていただけてうれしいです！個人的にも川西くんのお話が好きなので、刺さってくださる方がいて良かったなあと思います。更新を楽しみにして頂けるとうれしいです。コメントありがとうございました！ (2019年12月14日 15時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
天祢 - 読ませていただきました!勿論全部のお話が素晴らしかったのですが、元々最推しなのもあって川西くんのお話が特に良かったです。深いなぁ…と思いました。更新頑張って下さい!楽しみにしています(^-^) (2019年12月13日 21時) (レス) id: dfbff6b887 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桔梗 | 作成日時：2019年11月16日 13時
