34...S side ページ34
S side
…やばい。
この座り位置にしたことを全力で後悔している。
いや、上司一人と後輩二人だとこういう図になるのは
当然っちゃ当然なんだけど。
ディープっつーか、良い意味ですごいオヤジ臭いっつーか、
この店はとにかく狭くてこじんまりとしている。
だから、その。
近くて。
…Aが。
いや、Aがっていうか、
後ろの人も隣のテーブルも全部近いんだけど。
好きって自覚しちゃうとこんなに違うものか？
こないだまでだったら平気だったよな、これくらい…
とりあえず、ずっと心臓が忙しい。
「でもこの間会ったの、久々だったんですよ。ね？」
「相変わらずなでてるねぇ〜♪」
「拗ねないの(笑)」
「もう！ホントやめてって！あれ酔っぱらってたの！」
俺に話を振ったり、相槌打ったり、突っ込んだり
そういう時、こいつは絶対俺の目を真っすぐに見る。
別にこれは俺だけじゃなくて。
もちろん松本さんにもそうだし、誰にでもそう。
こうやって相手の目を本当に真正面から見て
話を聞いたり笑ったりできるのは、
こいつの良いところ。
そして俺がこいつを好きな理由の一つ
…かも。
で、何が心臓を忙しくしてるかって、
隣にいて、そもそもの距離が近いから
目ぇ見られると、すげぇ近くて。
めちゃくちゃ、ドキドキする。
しかも。
お酒が入って、盛り上がって、楽しくなって、
いつもよく笑う奴なのに、さらにケラケラ笑うAが
笑うたびに体をこっちに寄せるから
あいつの肩が俺の肩に当たる。
肩って…やべんだよな。
「なでてるねぇ〜♪」なんて、
さっきは手で肩、触られたけど。
不意に肩同士がぶつかるのも、
相当やばくて。
動揺して、
心臓がものすごい速さで脈打ってんのを
気付かれないように必死だった。
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作者名：ぽろ
| 作成日時：2016年5月11日 20時
