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「天、ミュージカルすごく良かったよ」
彼にそう言えば
「ありがとう、楽しんでくれてボクも嬉しい」
照れるように微笑する。
でも彼は複雑そうに少しだけ目を逸らした。
「舞台上の天、輝いててかっこよかったよ。
プロの役者さんみたいに華があった！」
「普段のボクがかっこよくないって言いたいの？」
彼は含み笑いをしながら皮肉めいた冗談をこぼす。
「ち、違うって！」
慌てて弁明のように言えばまた彼は笑んだ。
「わかってる。
Aにそう言ってもらえてすごく嬉しいよ」
私の名前を呼ぶ声と嬉しいの言葉と屈託のない笑み。
彼に惹かれるには充分すぎる材料だった。
天と別れピアノ室に向かった。
椅子に掛けてピアノを弾き始める。
もし、この指が思うように動けば。
もし、私が感情を曲にしてあの少女が歌ったように私の演奏で人を圧倒させられたなら。
幼い頃から親しんでいるとはいえ、毎日練習して努力を積み重ねてきたわけじゃない。
趣味の範疇を出ない音は自分で弾いて楽しむだけで心にまでは響いて来なかった。
あんなすごいパフォーマンスを見せられた後でこれで満足しろなんて無謀な話なのはわかりきってはいたが。
練習忙しいんだろうな。
あのパフォーマンスをするにはどれだけの努力があるんだろう。
いつのまにか手は止まっていた。
鍵盤から窓の外へと移った目線は特に目的もなく晴れ渡った空を眺めている。
なぜか彼のことばかりを考えていた。
これが彼への憧れなのかパフォーマンスへの敬意なのかなんなのかはよくわからない。
最近、いつのまにか彼の姿を探していて、ずっと目で追っている。
彼の一挙一動に一喜一憂しているような気もしなくはないから。
そろそろ帰るべきだろう。
考え事をするためにここを借りているわけじゃない。
きっと答え出ない考え事だろうし。
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汐見(プロフ) - 結夏さん» 素敵な感想ありがとうございます。励みになります。これからもそう思っていただける作品になったらと思っております。同時に更新、大変お待たせをいたしました。これからもこの作品並びに不束者ですが汐見をよろしくお願いします。 (2019年11月27日 20時) (
レス) id: ff314090b7 (このIDを非表示/違反報告)
結夏 - とても面白く、お話の世界観に引き込まれ時間も忘れて読み進めてしまいました。更新お待ちしております。 (2019年6月30日 14時) (レス) id: 1273e93dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：汐見 | 作成日時：2018年11月16日 19時
