思春期に中指を【95's】 (ページ8)

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傘がスピーカーとなり、柔らかな雨の音をぼつぼつと強い音に変えている。
足元は時々ぴしゃりと音を立てて水を跳ねさせる。

「ジミナ〜今度晴れの日いつ？」
「知らね」
「ねえジミナもっと傘入れてよ肩濡れる」
「貸してもらってる分際で文句言うな！」
「私今度からテヒョン用も持ち歩こ、ジミンおつかれ」
「おうよ〜、天気は自分で調べてねん」

折りたたみ傘2つの下に、3人の高校生。
私とジミンはリュックと足元が濡れる程度で、テヒョンはジミンの傘に入り、スペースがなく肩が濡れている。

放課後ジェラートは中止だ。
思った以上の大雨と寒さで、冷たいものなど食べている場合ではないから。
誰かの家に行くかとか、そんなことは未定。
さっきメニューをちょろっと調べてみてとても美味しそうだったから残念だけれど、寒いとめっぽう体を壊しやすい私だから仕方がないっちゃ仕方がない。
もし、テヒョンとジミン二人だけだったら、雨の中でも走り回って食べに行っていたのだろうか。迷惑かけてないかな私は。
たかがジェラートひとつに頭を悩ませる自分が嫌になってくる。

「A、無口タイム？なんかやなこと考えてたしょ」
「うーんバレたか」

こういうときにすぐ気づくのはジミンだ。
それに乗って癒やしをくれるのがテヒョン。

「溜め込み禁止条約したのに」
「いつしたそれ」
「あーっジミナジミナ濡れる範囲増える」
「へいへーい、で、なに溜め込んでんの」

「いや、ため込めてはいない。くだらないこと、考えてただけ。」

くだらない自分を認めた途端、なんだかどうでも良くなってきた。

一周回って強くなる雨音にも構わず走り出したい気分にもなる。

「今日テヒョンかジミン家空いてるー？」
「俺無理だわ」
「俺も無理、こんなに濡れてる男子高校生がいる部屋に人呼べない」
「あいにく私も無理だわ、グルチャで会おう」
「おけー、通話する？」
「既読スピードえぐ太郎ことジミンスィが好きなときに始めんなら始めて」
「いいねその呼び名」
「テヒョンまでやめてくれ」

きっとしばらくこの雨はやまない。

雨が晴れに変わることはなくても、雨を楽しむことはできた、3人なら。

「虹とかでないかなー」

毎秒強くなる雨の中で、ぼやりとつぶやいた。