思春期に中指を【95's】 (ページ3)

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「あっやばい数学の教科書忘れた」
「テヒョンとこ数学いつ？」
「2限」
「了解貸すわ」
「ありがと！」
「今度肉まん奢りね」

二人の会話を聞きながら、流れていく町並みを見つめる。
心地のいい切なさに包み込まれる気がして、昔のことを思い出した。

「あーあー学校めんどくさー」

頭の中に蘇ってきた記憶を誤魔化すように大げさにそう言った。

「それなー」
「寝坊しないくらいの登校時間にしてほしいよね」

何気ない日々は、楽しい地獄のようだった。

楽しい、地獄。

傍から見ればただの地獄かもしれないな、この世は。私達が生きる世界は。

一日がようやく終わっても、すぐまた明日になり、目を擦りながらバスに乗る。
それの繰り返し。

でも、それでも、この場が楽しい地獄であると私達は感じられていた。

本当の「地獄」を見たから。

暇なときには物思いにふける癖があるせいで、よく一人で深刻になったりするが、この時間は嫌いではない。

「Aとテヒョンア今日放課後空いてる？」
「俺はフリー」
「私もフリー」
「特になければ新しいジェラート屋いかない？」
「おっジミンシ、青春ですね。私がおなごを謳歌できるチャンス」
「なんだそれ」

くすっと吹き出すところだった。
たまにジミンが冷静になるのが面白くて好きだ。

─好きだ。

特に恋愛的な意味ではない。
ただ友達としてそういうところが好きだから、好き、と表現するだけ。

以前女友達の前で二人のどこどこが好きなんだよね、と話したとき、恋愛的な意味だと勘違いされてかなり危なかったことを思い出す。

色んなことを考えるのは楽しいけれど、たまに不快な疑問が浮かぶのは嫌いだ。

「後で味調べとこ〜！」

ウキウキした口調でテヒョンが言ったっきり、会話は途切れた。

今日のバスはなぜかとても長く感じた。

教室につく前なのに無駄に疲れてしまいそうだったから、またイヤホンで外の音を遮断し、音楽に意識を集中させる。

何気ない日々がこのまま、何も変わらず続くように、無意識に願っていた。

テヒョンの口が動いているのが目に入ったが、何を言っていたかは音楽にかき消されてしまい聞き取れなかった。