あ い く る し い 。

２７．願い ページ27

．





「れーんくん」






朝のSHRが終わってすぐ。教室内に響いたその声に、そこに居るほとんど人が振り向いた。



もちろん、私もその中のひとり。



解いていたプリントから目を離して、声の元を見やると、何やら楽しそうに会話する河田さんと廉の姿が目に入った。





見ただけ。どんな話してるとか、どんな顔してるとか。全然、分からないし、検討もつかないのに。





･･･どうしてかな。

泣きたくなるなんて、アホくさい。





廉に彼女が出来た。そんな事実を耳にしてから、もう何週間も経とうとしてるのに。未だに、耐久性はついていないみたいだ。



現に、今。初めて目にした、2人の姿に、性懲りも無く、動揺してしまっている自分が居るのだから。






なつ「A！次体育やで」

「･･･あ、そっか」

なつ「なーに？永瀬のこと、やっぱ気になるん？」

「･･･別に、そんなんじゃ、」

なつ「まあ、そりゃ気になるか。うちもAに彼氏とか出来たら、気になるもんなぁ、」

「･･･え？」







ランドリーバックの紐を肩に掛け直して、なっちゃんが零れ落ちた髪の毛を払った。








なつ「親友に彼氏が出来たら気になる心理。Aにとっての永瀬って、親友同然やろ？」








な？って笑ったなっちゃんをもう一度、見つめる。

クラスにはもうほとんど、人が残っていなかった。ついさっきまで、すぐそこで河田さんと談笑していた廉も、いつの間にか、居なくなっていた。







「･･･なるほど。確かに、そうやね」







親友、か。


私と、廉。私達自身が、そういう関係である限り、周りが私達を意識することは、絶対に、ありえないって。



そんなこと、分かっていたのに。
寧ろ今までは、それを、望んですらいたはずなのに。





言ってしまいたい、なんて。おかしいのかな。廉への気持ちを、好きって、言葉を。言いたくなる。





だって。


ずっとずっと、好きだったのに。



廉も、なっちゃんも。誰ひとりとして、気付かないまま。いつかなくなってしまうのだろうか。




私の想いなんて、消えてしまう日が来るのだろうか。

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