標的175 ページ44
正午が過ぎた頃。Aはある場所に向かっていた。
建物に入って部屋の扉を開ける。中には二人の男がいた。
「やぁ，ディーノ，スクアーロ
お取り込み中だったか？」
「いや，大丈夫だ」
「スクアーロ，調子はどうだ？」
「もうとっくに回復してんだが，跳ね馬がうるさくてなぁ」
漸く今日，退院の許可が下りたらしい。たった一日入院するだけでもスクアーロにとっては苦痛なのだろう。しきりに手を動かしていた。
ﾋﾟﾘﾘ。軽快な機械音が響く。正体はディーノの携帯らしい。応答するためにディーノは一度外に出た。
「んで，なんでテメェは来たんだよ」
「見舞い兼......なんだろうか。報告が正しい言葉か
今日勝負なんだよ。見に来てくれるのかなって」
「行くぞぉ」
Aは驚いたと両目を見開く。冗談のつもりだったのだろう。予想外の返答にAは理由を訊いた。
「見に行きゃぁ，テメェの正体がわかるかもしれねぇからなぁ」
「正体......わかるといいな」
Aは自ら晒す気はないようだ。戦闘中にそれなりのきっかけがない限り，スクアーロの目的は達成されないだろう。
じゃあな。Aはディーノとすれ違って病院を出ていく。人通りの少ない路地に入ると電話をかけた。
相手は地元の知り合いなのかイタリア語で応答した。
〔やぁ。君から電話をかけてくるなんて珍しいじゃないか〕
〔あの時の借り，返してもらう〕
〔何が望みだい？〕
〔×××××××××××と××××××＿＿〕
〔それはちょっと困るね〕
〔最後まで話を聞け。後者は二つの選択肢がある
今日の夜，私が電話をかけたら××××××××××××，かけなかったら先程の条件だ〕
相手は考えているのか返事の時間が空く。返ってきた言葉は承諾だった。
〔君の功績の報酬なら，それが妥当だね
君の優秀さは認めざるを得ないから〕
そこまで云って相手は電話を切る。別れの言葉がないのはいつものことなのか，Aが気にする様子はなかった。
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作者名：雲狼 | 作成日時：2019年7月25日 14時
