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142. ページ7

「A、何か食べるかい?」


倒れている切原を放置して、パラソルに戻ってきた幸村はAに問いかける。


「かき氷!」


予想外に食いついて来たAに驚きながらも、幸村は優しく笑った。


「ジャッカル、赤也に荷物番させて遊んで来なよ。
俺たちは海の家行ってくるから」


桑原に視線を向けた幸村は、それだけ告げてAを立ち上がらせる。

倒れる切原を苦笑いしながら一見した桑原は幸村に軽く頷いて、やれやれとビーチへ向かった。

介抱するのは自分になると、わかっているからだろう。




「かき氷好きなのかい?」


海の家へ向かいながら、幸村が問いかける。

一瞬返答に詰まったAだが、すぐに笑って口を開いた。


「3年以上、食べてないから」


彼女は普通を、もうずっと経験していない。
かき氷の冷たさも、彼女の記憶には残っていないのだ。


少し列になっている海の家。
その列の最後尾に足を止めた2人。

幸村は静かにAを見つめ、掌に爪を立てた。


「他に、したいことある?」

「え?」


突然の質問に、Aは首を捻る。


「かき氷を食べる以外に、何かしたいことある?」


2つのビー玉が、Aを優しく見下ろした。



今日、海に行こうと言い出したのは、Aの為だった。

もちろん、部員で思い出を作りたいという理由でもあったが、幸村はただAに普通を味合わせてあげたかったのだ。

見返りを求める優しさでも、同情でもない。

ただの友達として、一緒の時を笑って過ごしたい。

ただ、それだけだった。


そんな幸村の心情など知らず、Aは大きな瞳を輝かせる。


「花火、見たい。
屋台の焼きそば食べたい。
学校帰りにクレープ食べたい。
たくさんいろんなところ行きたい。
それから……雪が見たい」


誰もが願うまでもなく叶うもの。

だがそれを口にするのは、相手が幸村だからできたこと。

Aにとっては、願うことさえ躊躇われる。

叶わない現実が、痛すぎるから。




「俺が……」

「いらしゃいませ」


返事をしようと口を開いた幸村だったが、店員の声にそれは遮られた。








“俺が全部、叶えるよ”






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SHINO(プロフ) - スノウさん» スノウ様!いつもコメントありがとうございます。スノウ様のコメントは本当に何度も読み返してはニヤけてしまって、とても力をいただいています。そうですね、私も主人公の気持ちをやっと書けたので嬉しいです。笑 どうか最後までお付き合いください。 (2017年4月20日 15時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - 雪さん» ありがとうございます。気をつけている事に気付いてくださって嬉しいです。fifthの表紙もありがとうございました。申請を出したので使わせていただきます!これからどのような展開になるかは秘密ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。ありがとうございます。 (2017年4月20日 15時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
スノウ - おつかれさまです!ついに主人公ちゃんから好き、という素直な気持ちが聞けて嬉しいのと同時に、これから彼女がどのように生きていくのか、不安なような楽しみなような。続編待ってます(^^*) (2017年4月18日 23時) (レス) id: 9bbfe87ee5 (このIDを非表示/違反報告)
- お疲れ様です。続編も楽しみにしています。SHINOさんの花火を空が泣くと表現するところや、情景は目に浮かぶのに感情は明かさないようにするところとか本当に好きです。これからも頑張ってください。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: 41f82b2237 (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - Yさん» コメントありがとうございます!儚さは私の意識している点でもあるのでとても嬉しいです。終わりを残念だと感じていただけるような作品をかけてよかったです。ですが、まだ終わりそうもないので引き続きお付き合いください。笑 応援、本当にありがとうございます。 (2017年4月16日 16時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:SHINO | 作成日時:2016年9月8日 17時

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