179. ページ45
ひゅるり、また一つ花火が上がり、空が泣いた。
「お前、俺のこと好きやろ」
乱れた呼吸は妙に落ち着きを取り戻す。
私はきっとその言葉を渇望していたのだろう。
渇ききった喉に注がれた水のように、私の心が呆れるほどに満たされていく。
……どうして、私たちは。
耳を塞いで目を閉じて、きつく体に爪を立て、今ある全てが削除されたとしても、告げてしまいたい。
時計なんて壊して、貴方の鼓動で時を数えたい。
貴方の側で生きたいと泣き喚いている自分を無視することなどできはしなかった。
嗚呼、私は。
「好きだよ」
透明だった。
もっと汚く泥水のように彼を汚すのかと思えば、汚れすら残せない、ただの透明な液体だった。
時間が経って蒸発してしまえば、想いの証さえ残らない。
なのに私はそれとは対に、初めて告げた己の感情がより一層恋情を突きつけてくる。
あまりに滑稽で、声をあげて笑ってしまいそうだった。
ああ、私は彼が好きだったのか。
好き、だったのか。
心の中ですら、呟くのすら許さなかった。
私自身が、彼への想い全てを堰き止めていたから。
だから、今やっと自分の気持ちに気付いてしまった。
私は、光が好きだったんだ。
どうしようもなく苦しくて。
どうしようもなく触れたくて。
その瞳を見ているだけで満たされた。
この感情の名前を、私はもう知っている。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 598人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
SHINO(プロフ) - スノウさん» スノウ様！いつもコメントありがとうございます。スノウ様のコメントは本当に何度も読み返してはニヤけてしまって、とても力をいただいています。そうですね、私も主人公の気持ちをやっと書けたので嬉しいです。笑 どうか最後までお付き合いください。 (2017年4月20日 15時) (
レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - 雪さん» ありがとうございます。気をつけている事に気付いてくださって嬉しいです。fifthの表紙もありがとうございました。申請を出したので使わせていただきます！これからどのような展開になるかは秘密ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。ありがとうございます。 (2017年4月20日 15時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
スノウ - おつかれさまです！ついに主人公ちゃんから好き、という素直な気持ちが聞けて嬉しいのと同時に、これから彼女がどのように生きていくのか、不安なような楽しみなような。続編待ってます(^^*) (2017年4月18日 23時) (レス) id: 9bbfe87ee5 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - お疲れ様です。続編も楽しみにしています。SHINOさんの花火を空が泣くと表現するところや、情景は目に浮かぶのに感情は明かさないようにするところとか本当に好きです。これからも頑張ってください。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: 41f82b2237 (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - Yさん» コメントありがとうございます！儚さは私の意識している点でもあるのでとても嬉しいです。終わりを残念だと感じていただけるような作品をかけてよかったです。ですが、まだ終わりそうもないので引き続きお付き合いください。笑 応援、本当にありがとうございます。 (2017年4月16日 16時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：SHINO
| 作成日時：2016年9月8日 17時
