幼馴染武勇伝【幸村様誕生記念企画】追加SS

幼馴染14 ページ14

しかし、看病って何するの？


熱なんて出ても、親は何もしてくれなかったし。

寝てれば治る、それが私の中では当たり前だった。



「うーん、どうするか」



とりあえず、人参でも食べさせる？

ほら、栄養あるし。



よし、冷蔵庫を漁ろう。

そう決断した私は、膝に手を着いて、
立ち上がろうと試みる。




パシッ、そんな音と共に腕を掴まれる。

なんだ、と振りむけば、ベッドに引きずりこまれた。



「ちょっ……んっ」



ちょっと、そう言いたかったのだが、
言う前に唇に熱い何かが重なった。






―――――――――――忘れてた。


精市は、熱が出るとキス魔になる。



最近そういうことがなかった為、忘れていた。

だがした本人は、記憶が全くないのだ。


私なんて、好きな男の子がいたのに、
見舞いに行ったらその子の目の前でされたし！


無意識に、らしい。






「離せ！アホ！」



手加減なしに、突き飛ばす。

わなわなと震える拳をぎゅっと握った。




うざい、うざい、うざい。


顔に熱が集まるのを感じる。

なんでこんな奴のせいで、
赤くならなきゃいけないわけ？



スースーと寝息を立てる精市は、
やはり意識がなくて、余計に腹が立つ。


バンッと音を立てて扉を開き、
階段を駆け降りた。





「もうっ最悪っ」



嫌がらせもここまでくれば許せない。


最悪、最悪、と何度もつぶやいて、
おばさんのお願いなんて忘れて、
そのまま家を飛び出した。



「妄想ハゲのくせに……」



明日どんな顔でアイツに会えばいいのか分からない。


だって、中学に入ってからは初めてだった。

小学生なら、殴って終わりだけど、
中学生となれば、違う。



幼馴染といえども、あんな事をされたら、
意識して当然だし。





何しろ、重なった唇の感触が消えない。





もうほんと。



「最悪」

幼馴染15→←幼馴染13

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す