【越前リョーマ】優しい君へ、

２１最低な男 ページ22

越前リョーマside






ごめん。


ごめん。


ごめん。





届きもしない言葉を、頭の中で何度も繰り返す。


俺、本当に最低だ。





『Aを置いて、行けるわけない』



ああ言えば、Aが怒るなんてわかってた。



『ふざけないで……っ！』



そう言って、泣くのなんてわかってたんだ。





俺はテニス以外に何かを大事にしたことなんてなかった。

Aを好きになるなんて、思いもしなかった。



だけど、こんなにも大事になって。

本気で離したくないと思った。




でも、俺はわかってたんだ。




テニスが1番大事だって。




でも俺は、テニスの為に女を捨てる最低な男にはなりたくなかった。




だからわざとアイツを怒らせて、



『別れ、よう……っ』



その言葉を言わせた。





アイツの泣き顔が、消えない。


アイツの声が、耳から離れない。


アイツの涙が、忘れられない。




俺はアイツを傷つけて、自分の為にアメリカへ行く。

全てを捨てて、アメリカへ行く。




覚悟なんてとっくにできてた。


なのに、俺はアイツを切れなくて、
最低なやり方で、逃げ道を選んだ。




「は……っ」



ほんと、最低だ。


桃先輩の事だ。

こうなることをわかってて、アイツに教えたんだろう。



俺が選べないと、知っていたから。






グッと拳を握った。


強く強く握って、テニスができなくなるほど壊れちまえばいいのに。


そしたら、アイツの元へ走って行けるのに。




……なんて。


本当に俺は馬鹿だ。









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